三明十種「血と骨と土と」
自宅の庭に埋まつてゐる
大小歪な石灰質の塊は
朝に降る雨のたびに
庭土に溶け出し
骨の髄まで沁みわたる
脈々と続く
同じ造りの扁平な顔
同じ訛りの同じ土地で
日はまた昇り
啖壺ひつくり返して鉢を置き
其の鉢にはびつしり三色菫を植える
壁は白ペンキで塗りたくり
屋根は紺碧に拵えて
嘸かし幸福な家に見えてたであらう
私の家族は
えにしを喰らつて生きてゐた
この土地ではこうならざるを得ない
啖壺の上の三色菫は遂には一色となり
いつしか風息に拐われて
土に還つてしまう
いつしか壁も屋根も剥がされて
骨を晒してしまう
癇癪起こして暴れる父の仔の私
妹の筆箱のキキとララが
泣いてる。
一区画先の国道を
生コン車が行き交えば
血が
骨が
土が
震える。
姜運「新大久保にて」
にんにくを
玉でいくつもいくつも食べた
今は笑っている人の前で
手渡した人は
責任をとらなくていい
たとえ唐突だったとしても
うらむはずなんてないし
どんな記憶も分けていいのだと
光の電車が教えてくれた
送る側の準備が整うまで
車輪は 音もなく待っている
忘れないままで
半分ずつ運んでいけるように
目配せをしよう ときどき
手はつながなくていいから
傾かせていいから
途中で止まっていいから
それがきりのいい場所なら
手渡した人が決めていいんだから
橋をかける
ここからは私ひとりで
大丈夫
二度語らせることはしないよ













