第9期(2018年4-6月)入選作発表!!

日本現代詩人会 詩投稿作品 第9期(2018年4-6月)
厳正なる選考の結果、入選作は以下のように決定致しました。

 

【選考結果】
第8期詩投稿欄 2018.4-6 入選作
金井雄二選:
【入選】
清見苳子「4.3 新緑」
【佳作】
宮永 蕗「降りしきる」
佐野 豊「青いペン」

 

中島悦子選:
【入選】
該当作なし
【佳作】
清見苳子「4.3 新緑」
降戸輝「卵殻の感触」
向出隆之介「臨海鉄道」

作品数289 投稿者187

4.3新緑——清見苳子

スタンドにもたれた
黙ったままのギターの丸い黒い穴に
入っているものはなんだろう

 

四つある椅子のひとつだけが
ぬけがらのように斜めに窓の方を向いている
端のくたびれた座布団に光があたり
気配だけが埃のように残っている

 

白い皿が対い合わせに二つ
同じ大きさ同じ形の
ひとつは陶器ひとつは磁器
中には胡桃がひと粒ずつのせられている

 

割る
もしくは割らない
割ってしまえば粉々に砕けた胡桃の断面
割らないかぎり永遠は手のひらの中にある
触れることはできなくても

 

うすみどり色の光の部屋は
まだ人肌のあたたかく
固まることのできないゼリーのような重さで
息を詰まらせにくる

 

天井の隅の壁紙がぼんやりと汚れている
誰もいない
私すらいない

*タイトルの「4.3新緑」の数字のあとは空白ですが、再現できなかったので、スペースなしで表記させていただきます。

 

金井雄二選
入選
「4.3 新緑」清見苳子

 詩として破綻なく、うまくまとまっている作品です。それだけに、やや創られた、または頭の中で構築した作品のようにも感じられました。たとえば、皿に胡桃がひと粒ずつのせられているのは、イメージ的にはわかりますが、本当のリアリティは私には感じられませんでした。ただ、言葉の扱い方、イメージの追い方等、一つの詩としての自分の形を持っておられる方だと思い、入選といたしました。

 

佳作
「降りしきる」宮永 蕗

 最初に短いセンテンスで、読者をグッと引き寄せる感じがしました。二連目からは意外な展開があり、読ませる魅力がありました。詩にも構成は大事なのです。作品の後半、「わたし」という言葉が多くでてきて前半のキレがなくなってきます。もっと推敲し、短い言葉でイメージさせた方が効果は大きいでしょう。ということで、佳作といたしました。

 

「青いペン」佐野 豊  不思議な感触の詩でした。詩を読む場合、その作品を自分に引き寄せて読むことが多いと思います。この詩では、ぼく自身、詩を書くときの白紙の紙を想像していました。さらさらさ、とは書けませんが、作者は書けているようでうらやましいです。しかし、ペンのインクが滲んでいるあたりに、不安なイメージがつきまとい、ここが魅力となっています。もう一篇ありましたが、「青いペン」を取りました。もっと違う作品を読んでみたいと思い、期待を込めて佳作といたします。

 

中島悦子選:  たくさんの投稿ありがとうございました。9期(2018.4-6)の本欄は、人生の悩み、怒り、苦しみ、悲しみ、喜びが言葉のシャワーとなって届けられている熱い現場でした。特に高校生から三十代までの若い方々の投稿も多いことは、とてもうれしいことです。一作、一作にコメントを書けないのは残念なのですが、これからも是非書き続けていただければと思います。
 なお、第一回、第二回の新人賞、新人に選ばれた方々は、選考に加えておりませんのでご了承ください。投稿者にお願いですが、タイトルは、詩において重要な要素なので、①かっこ書きにするか、②タイトル・氏名・本文という書き方をするか、①②いずれかで選者に分かるようにしていただければありがたいです。タイトルがない場合は、本文と区別するためにも最初に「無題」と書き込んでください。よろしくお願いいたします。
 今回は、特に感情を自制して、客観性をもたせた作品を選びました。自分の思いを生のままぶつけることでいいこともありますが、やはり作品として成り立つかどうかの見極めは大切なのではないでしょうか。自身にとって、最も厳しい読者や尊敬する作家を念頭において、その人がどう批評するかを想像してみるのもひとつの方法かと思います。
 詩人の故田村隆一氏は、「言葉は立っている」と述べています。詩は平面に書いているからといって、二次元ではありません。彫刻のように三次元。裏表、上下全ての角度からノミを入れるつもりで彫り込んでみてください。言葉を自立させ、浮き立たせることで本当の詩の形が見えてきます。

 

入選 なし
佳作 
清見苳子「4.3 新緑」
 静謐な部屋の中に置かれたいくつかのオブジェたち。その中に動的な胡桃というアイテムがあります。「割る もしくは割らない」という微妙な選択の中に揺れる言葉が効果的です。象徴的な書き方にセンスを感じます。ただ、「新緑」を生かすためにも、最終連の存在は要検討でしょうか。

 

降戸輝「卵殻の感触」  卵殻のイメージを紡いだ作品。少し説明的過ぎたところはありますが、生命の神秘を人工の卵という現代的な視点をもって書いています。「僕」と「感触」の関係性が今の時代や未来とどのようにリンクするか、印象深いフレーズが目立つように厳選するとさらにいいと思います。

 

向出隆之介「臨海鉄道」  一枚の絵のように抒情的な作品。西日の当たる海岸の線路沿いをただ歩いている情景と淡い恋がみずみずしくマッチしています。フレームがしっかりとまとまっているところが平明ながらもいいと思いました。この言葉に対する緊張感と透明度を維持し、作品を書き続けてください。

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