井坂洋子氏の講演をライブ配信
2024年度通常総会を8月24日、東京・アルカディア市ヶ谷で開催します。
会費は会員無料、一般1,000円です。
一般の方で懇親会(7,000円)に参加希望の方は、1月20日まで
ttoshio59@yahoo.co.jp までお申し出ください。
●現代詩ゼミナールinぐんま 新延 拳
二〇二三年五月二七、二八日に群馬県前橋市を中心に、同ゼミナールが開催された。地域におけるゼミナールは、4年ぶりとなった。日本現代詩人会発足70周年記念として、東京を除く全国7か所で計画されていたものが、プレイベントの三国を除き、すべてコロナ禍のためにやむなく中止せざるを得なかったという経緯があったからである。各地域とも、相当な準備をしていたので、まことに残念なことであった。
よって、今回の群馬におけるゼミナールは、満を持してということになったが、地元群馬の多大なご尽力により、また天候にも恵まれ、成功裡に終了したことはまことに幸いなことであった。遠方からのご出席もあり、参加人数は、八九名となった。
五月二七日
① 前橋文学館に集合。
ボランティアの方からのレクチャーを受け、展示を見学。萩原朔太郎につき学ぶ。
② 群馬会館において式典。
㋐朔太郎研究会幹事長の藤井浩氏講 演 『朔太郎と「郷土」』
㋑マンドリン演奏「前橋マンドリン楽団」
㋒朗読「笑う猫の会」
③ 懇親会
五月二八日
① 伊香保竹久夢二記念館見学
② バスにて榛名湖畔移動・散策
希望者別途、榛名まほろば現代詩資料館の見学
二日目は、榛名湖に向かう道すがら躑躅の花が道々を覆い、野鳥の鳴き声がしきりであった。ロープウェイで榛名山の頂上に登ったり、そよ風に吹かれながら湖畔を散策するなど、初夏の高原を大いに満喫した。現代詩資料館では、詩についての有意義な議論が活発になされた。
〇藤井浩氏の講演内容
「朔太郎と郷土」というテーマはいろんな人が書き語ってきたが、本格的に研究されているか疑問に思っている。むしろこれから始まる大きなテーマではないかと感じている。
「月に吠える」、「青猫」は世界的な
評価を得ている。地域を越えた普遍的な価値のある詩集だという評価は定着している。これらの詩のベースには郷土がある。前橋にとどまらない、心の郷愁、ノスタルジア、原風景という言葉を朔太郎は使っている。朔太郎は彼自身が撮った写真も残しているがエッセイ「僕の寫眞機」の中でも「僕はその機械の光学的な作用を借りて、」、「自分の心の郷愁が写したい」と書いている。朔太郎という詩人の仕事そのものは郷土ということを抜きには捉えられないと思っている。
朔太郎は四十歳の時、妻子を伴い上京するが、彼の残した詩の九割が四十年間暮らした前橋で書かれている。彼にとっての郷土前橋の大きさが分かる。朔太郎は誤解される面も多く、純情小曲集の中の郷土望景詩を読むと、特に前橋に対して愛着と憎しみ、親しみと怒りとか、アンビバレンスな思いやネガティブな感情、そういうものが混在している。これは生まれた土地を多面的にとらえているということだ。
私の記者時代の取材では、彼は、一切仕事につかず生活能力は全くなかったので、ああいう人間には育つな、という考えを持つ人も多かった。そうしたことが、郷土に対して憎しみや怒りの表現に繋がっていくと思うが、そればかりではない。
朔太郎は家にこもっていたのではなく良く歩いた。自宅から新前橋あたりまで行き、帰って来る経路だが、ゆっくり歩けば半日はかかるコースである。
伊藤信吉は「郷土望景詩をめぐって」という本で「郷土望景詩を分類すると基本的には激越の詩と哀傷の詩の二つに分かれる」とする。激越の詩も哀傷の詩もその多くは朔太郎の散歩コースにあることが分かる。「白い目で見られて唾を掛けられた」ということばかりではない。朔太郎とすればこれらを混在させ、きれいごとで終わらせない、ということで解釈すべきであろう、というのが伊藤信吉の分類である。「波宜亭」は唯一の恋愛詩であり郷土への愛着と拒否の両面の感情、そう言ったものが郷土望景詩に込められている。
また朔太郎はマンドリン楽団 ゴンドラ洋楽会を作り、それに係った人たちは高崎の群馬交響楽団のもとになっている。朔太郎は自分は白眼視されたと言いながらも、先駆的な文化活動を仕掛けたそういう人であったとも言える。詩を読むだけではわからない一面である。
「郷土望景詩」は大正一四年朔太郎が東京に本格的に住み始める年に発行された。「純情小曲集」や昭和九年出版の「氷島」については評価が分かれる。激しく批判したのは、後に研究会四代目会長の那珂太郎だった。後に批判した理由について当時「月に吠える」や「青猫」があまりにも素晴らしいので、他のものが付随的に見えてしまったと言っている。その後思考を継続する中で少しずつ評価が変わり最終的には朔太郎の詩業の中で大切なものであったと結論付けている。
(講師・藤井浩氏は上毛新聞の記者時代、朔太郎生誕百年に取材担当。その後様々な関わりを持つようになり、現在「朔太郎研究会幹事長」)
各地のイベントから
山形県詩人会
現代詩講演会報告 高 啓
山形県詩人会は二〇二三年四月二三日、山形市の遊学館で総会とともに、記念講演会を開催した。講師は宮城県詩人会会長の佐々木洋一氏。
「未来ササヤンカの村について~十代からの詩の歩みを振り返りながら~」の講演要旨を報告する。
黒田三郎の詩に「紙風船」がある。私は若い時、ある女性に恋するも思いが伝わらず、気づくと自殺の名所にいた。その時「落ちてきたら/今度は/もっと高く//打ち上げよう」の詩が浮かび思いとどまった。詩には力がある。
私には、詩の原点となる出来事がいくつもあった。私が育った栗駒は鉱山や馬市で繁栄した近代的な街だった。哀愁の曲が流れ、サーカスまで催された。雄鶏が捌かれ、鳩が襲われる殺戮を何度も見た。生と死を直視し、せつなさを感じたことも私の詩の原点になっている。
父の母の実家が栗駒。父母の生まれは国後島で引き揚げてきた。私は、母親のしなびれた乳房(ちちふさ)を咥えて育ったマザコンだ。学校の担任が女性だと成績が上がった。
戦後、父は栗駒ダム建設に従事し母は駄菓子屋をやったが家は貧しかった。友達が自転車通学する中、自分一人中学校まで歩いて通った。長い道のりを歩く中で詩が生まれた。詩を書き始めたのはこの頃だ。物に執着しないが、レコードプレイヤーだけは買ってもらった。ベルレーヌやヘッセの詩集の付録のソノシートを聴き夢想するのが至福だった。二一歳で最初の詩集を出した。詩集を出すたび、その時々の原点が表出されていく。
第三詩集「未来ササヤンカ村」の「ササヤンカ」とはささやかからの造語だ。詩を通して心がつながる理想や願いがこめられている。今読むと気恥ずかしいが、この詩集を今も引き摺っている。
詩には力がある・・・今はそうは思わない。今、詩誌「ササヤンカの村」を発行し原点に立ち戻ろうとする自分がいる。かつて詩を書き始めたころ、無謀にも川崎洋の「櫂」に入りたいと手紙を書いた。丁寧な返信には、「詩は書くか書かないかそれだけだ」とあった。まさしくそう思う。これまで自分を詩人だとは言ってこなかったが、これからは詩人としてやっていこうと思っている。
「2023年 埼玉詩祭」 埼玉詩人会理事長 宮澤新樹
埼玉詩人会主催による「2023埼玉詩祭」が「詩の地平を広げて」をテーマに5月21日、さいたま文学館(桶川)で開催され、会員や招待者など約60人が参加した。
第一部では埼玉詩人賞の贈呈式が行われた。詩集「足もとの冬」で、第29回埼玉詩人賞を受賞した里見静江氏に賞状と副賞が贈呈された。里見氏は「夫が亡くなった後、コロナ禍で詩の勉強会が出来なくなりモヤモヤ感がたまったが、突然言葉が降りてきて詩集を出すことを思いついた。」と述べ、受賞詩集から2編を朗読した。
第2部は、「第2回MYポエムコンクール」で埼玉県知事賞を受賞した埼玉県立松山女子高校3年・西リオさんとさいたま市立三室中学校3年・原田みつきさんが受賞作を朗読した。このコンクールは世界3大奉仕団体の支部・埼玉キワニスクラブと埼玉詩人会共催の社会貢献事業である。
第3部では、日本現代詩人会会員・下川敬明氏が「詩の領域を広げるためにーオクタビオ・パスを読みながら」をテーマに講演した。
オクタビオ・パスはメキシコの詩人でノーベル文学賞受賞者。下川氏はパスの詩「二つのからだ」「きみと」「手で触れる」「マイスーナ」を紹介しながら、それぞれの詩の主題であるエロティシズム、生と死、孤独や詩の構造等を解説し、読み・書く詩の領域を広げる手掛かりやヒントなどを考察した。また大岡信の詩「さわる」や自作詩「抒情的なマカロニ語―サラダ」「廃墟の空に」も紹介し、「この講演を聴いた方の新たな創造への意欲、創造力のはたらきを刺激することが出来たら幸いである」と語った。
一般には馴染みの薄いメキシコの詩人オクタビオ・パスの紹介や詩の考察についての講演は今回の詩祭のテーマ「詩の地平を広げて」に沿った内容であり参加者の視野を広げ創造力の刺激となる良い機会となった。
新型コロナ対策も緩和され日常生活が戻りつつある中で開催した今年の詩祭は、昨年よりも参加者が増え、主催者側としては喜ばしい限りであった。
日原正彦氏が講演 岐阜県詩人会総会にて 岩井 昭
岐阜県詩人会第11回総会は、6月4日㈰午後2時よりJR岐阜駅構内のハートフルスクエアーGにて開催された。頼圭二郎会長からようやく平常の生活が可能になった喜びと、顔を合わせて詩を語り交流できることの大切さが語られた後、各種議案の報告及び質疑応答が行われた。次いで来年度に第39回国民文化祭が岐阜県で、詩部門は養老町を会場に開催される為、その準備と体制について話し合った。
その後、日原正彦氏が「詩と音楽について(別れをテーマに)」の演題で講演された。その要旨を紹介します。最初に「惜別の唄」の由来と解説で、惜別の歌は戦時中に作曲された中央大学の学生歌であり、当時中央大学の学生であった藤江英輔が作曲した。歌詞は島崎藤村の詩集『若菜集』に収録されていた「高楼」に基づいているとして、中央大学の学生歌「惜別の唄」と島崎藤村の「高楼」の資料、レコード化された小林旭の「惜別の唄」を実際に聴きながら、万葉集以来の和歌の形式を支えている音数律構造について語られた。
次に立原道造の詩集『萱草に寄す』より詩「わかれる晝に」に触れて、実際に音数律を改作してみた作品と比較しながら、現在の詩においての音数律との関係と課題について、又、立原道造の詩の独特の音楽性について話された。
詩は意味やイメージや喩などを介して感じる。詩は言語であるから詩の音楽性といっても間接的なものである。音楽は直接的に心を奪い、癒やす。音楽は言語ではない、敢えて音楽の言語といってみると、それは透明な言語、あるいは無限の言語ではないか。音楽は楽、音を楽しむ、まず楽しめというようにできている。文学は学、学=知、知性、詩には批評性や社会性、思想性がある、と講演は続いた。
楽しむと言うことでは、自分が詩の中にいる 作品としての詩だけでなく、生活の中に詩がある 見るもの聴くもの何でも詩になる ポエジーとともにある ポエジーの中にいる音楽と詩の違いでは、詩人はどこかで音楽の透明な言語に憧れている。音楽家もまたどこかで詩に憧れている。等、印象深くこころに残った。
最後に、ショパンの練習曲10―3(通称『別れの曲』)を聴いて講演は終了したが、「詩を生きる」をベースにした熱い講演だった。
「現代詩ゼミナール in ぐんま」 について
理事 新延拳
現代詩ゼミナールのお知らせです。
地方における開催は実に久しぶりになります。
70周年記念大会も全国6か所で計画準備されていましたが、
長引くコロナ禍によって、すべて中止のやむなきにいたったことは、
すでにご報告の通りです。
しかしながら、昨今の状況を鑑み、
来る5月27、
実に4年ぶりのことになります。
初夏の上州、すがすがしい榛名湖において、
久しぶりに全国の詩人が集まり、詩を語り、朔太郎をしのび、
懇親を深める素晴らしい会にしたいと存じます。
会員の方には、返信ハガキを同封したご案内状をお送りしますが、
会員でない方のご参加も大歓迎です。
非会員で参加いただける方は、
メールアドレス gboe2725@yahoo.co.jp 井上英明 までご連絡をください。
お待ち申し上げます。
2022年度通常総会を開催
佐川亜紀理事長
日本現代詩人会の2022年度通常総会が8月27日(土)、アルカディア市ヶ谷で午後1時30分から開催された。総会司会が鈴木正樹理事と長田典子理事。議事に先立ち第70回H氏賞受賞者の高塚謙太郎氏が「詩についてのメモ」というテーマで講演した。
講演終了後、高塚氏に日本現代詩人会から花束贈呈が行われ、2時過ぎより議事が始まった。開会の辞は佐川亜紀理事長で、ご来会の皆様への謝辞とともに、新型コロナ感染状況により懇親会を急遽中止にしたことへの報告とチェコ共和国EU理事会議長国記念事業の「街角詩人ロボット」の紹介がされた。次に八木幹夫会長が挨拶を行い、高塚氏の講演内容を受け、新しい力は同時代からは反発を受けやすいが西脇順三郎も同様だった。若く新しい力によって詩が覆される力が必要な時代だと述べた。その後、議長団として沢村俊輔氏と原かずみ氏が選出された。
次に佐川理事長が会員数1032名、出席者45名、委任状457名、合計502名となることを報告し、沢村議長が出席者数と有効委任状数の合計が会員数の3分の1を超えたので、会則28条により総会が成立することを承認した。佐川理事長によって前年度総会以降、今年6月30日迄に逝去された会員28名の名前が読み上げられ、八木会長の「黙祷」の発声により黙祷が捧げられた。
報告、提案、議論――総会の討議内容
Ⅰ 総会承認事項(各担当理事報告)
議事の承認報告、議案などは総会資料を元に各担当理事からの報告で進められ、すべて承認された。その概要は次の通り。
1 会務一般について(佐川理事長)
2022年度の理事会は主に早稲田奉仕園セミナーハウスで開催した。理事会はインターネットで行われた第6回理事会、第7回理事会を含め11回開催した。第2回理事会は新メンバーによる理事会となり互選により八木幹夫会長他、各担当理事を決定。理事会議事録は長田典子理事が毎回作成。毎回各理事の出席率も高く重要事項の決定も順調に進んだ。会計担当の井上敬二理事が病気により理事業務継続困難になり2月5日の臨時理事会をもって退任承認、根本明理事が会計担当も兼務することを承認。会員名簿の発行は佐川亜紀理事長と長田典子理事が担当し12月1日現在の在籍者により発行した。広告は15社。収入は35万円の協力があった。詩集賞の詳しい選考経過は現代詩人会発行の冊子『現代詩2022』で発表した。
2 先達詩人の顕彰 (佐川理事長)
甲田四郎氏と谷川俊太郎氏を5月29日の「日本の詩祭2022」において顕彰し顕彰状と記念品及びお祝い金を贈呈した。
3 会報の発行(鈴木理事)
164号(2021・10・25発行)新理事会の構成メンバーと役割決定。八木幹夫会長、佐川亜紀理事長、田村雅之副理事長挨拶。2021年度通常総会(書面形式)の討議内容。2021年度の事業計画。各地の声「香川詩人協会25年の歩み」(赤石旅夫氏)他。
165号(2022・1・25発行)八木幹夫会長新年の挨拶、先達詩人甲田四郎氏、谷川俊太郎氏の挨拶・略歴。現代詩の記憶「最後の五分間」(新藤凉子氏)、2021年度総会(書面)における質問・要望・意見への回答。各地の声「鳥取県現代詩人協会の現況」(手皮小四郎氏)、各地のイベント「国民文化祭・文芸祭みやざき2020 さきがけプログラム 現代詩の祭典を終えて」(谷元益男氏)「岩手詩祭2021」(照井良平氏)「第42回ちば秋の詩祭」(加藤廣行氏)「第36回国民文化祭わかやま2021いわで現代詩の祭典」(武西良和氏)「群馬詩人クラブ第34回秋の詩祭」(石井一比庫氏)「青森詩祭2021」(藤田晴央氏)他。
166号(2022・4・25発行)第72回H氏賞・うるし山千尋氏『ライトゲージ』、第40回現代詩人賞・倉橋健一氏『無限抱擁』。受賞者の略歴・受賞の言葉と選考経過報告。「詩は未知の世界の構築であり、そのことばはすべて隠喩でできている」(野沢啓氏)各地の声「わかやま詩の会」(中尾彰秀氏)イベント「いばらき詩祭2021in結城」(生駒正朗氏)「兵庫県現代詩協会第11回ポエム&アートコレクション展」(山本真弓氏)「日本の詩祭」予告他。
167号(2022・7・25発行)「日本の詩祭」開催の記録。2022年第6回HP現代詩投稿欄「新人賞」浅浦藻氏、「新人」佐和田纓氏、シーレ布施氏、岡暁氏(逝去)の発表と受賞の言葉。選考委員長上手宰氏による選考過程の報告。各地のイベント「埼玉詩人会2022埼玉詩人祭」(会長川中子義勝氏)「横浜詩人会詩集2021を読む」(三浦志郎氏)。現代詩の継承「若い世代と手をたずさえて~青森の場合 藤田晴央「国民文化祭美ら島おきなわ文化祭2022詩の祭典」の予告他。
4 H氏賞・現代詩人賞の決定
(宮崎理事)
第72回H氏賞選考委員は古屋久昭(選考委員長)、石下典子、伊武トーマ、清岳こう、草野早苗、土屋智宏、冨岡悦子各氏、第40回現代詩人賞の選考委員は秋山公哉(選考委員長)、新井高子、伊藤芳博、小林稔、鈴木ユリイカ、高良勉、中島悦子各氏、投票管理委員は広瀬弓、草間小鳥子各氏にお願いした。第72回H氏賞はうるし山千尋氏『ライトゲージ』、第40回現代詩人賞は倉橋健一氏『無限抱擁』が選ばれた。会員投票及び選考委員推薦による候補詩集については冊子『現代詩2021』、会報166号、ホームページに掲載。
5 『現代詩2022』(小冊子)の発行
(岡島理事)
田村雅之副理事長と岡島弘子理事が担当した。第72回H氏賞関連として、受賞者略歴、受賞の言葉、選考経過、選考評、受賞詩人について、作品抄を掲載。第40回詩人会賞関連として、受賞者略歴、受賞の言葉、選考経過、選考評、受賞詩人について、作品抄を掲載。先達詩人の顕彰関連としては、先達詩人の略歴、作品、詩人紹介を掲載。H氏賞、現代詩人賞関連資料を掲載。
6 「日本の詩祭2022」の開催
(田村副理事長)
2022年5月29日(日)午後1時より、東京・市ケ谷、私学会館アルカディアで開催された。司会は田村副理事長、斎藤菜穂子氏。第一部は八木会長の挨拶、佐川理事長の開会の言葉の後、第72回H氏賞の贈呈式となった。選考委員長の古屋久昭氏の選考経過報告の後、うるし山千尋氏に八木会長よりH氏賞が贈呈された。岡田哲也氏の受賞詩集『ライトゲージ』と受賞者紹介の後、うるし山氏が言葉を述べた。
続いて第36回現代詩人賞の贈呈式では、選考委員長の秋山公哉氏による経過報告の後、八木会長より倉橋健一氏に現代詩人賞が贈呈された。選考委員長の秋山公哉氏による経過報告の後、たかとう匡子氏が受賞詩集『無限抱擁』と受賞者について紹介した。その後、倉橋氏により受賞の言葉が述べられた。続いてうるし山・倉橋両名による自作詩朗読。
先達詩人甲田四郎・谷川俊太郎両氏の顕彰。顕彰者・甲田四郎氏の挨拶。続いてズームにより谷川俊太郎氏が挨拶した。
第Ⅱ部は谷川俊太郎氏を囲んで秋亜綺羅理事の司会により、谷内修三氏、杉本真維子氏らによる座談会が行われた。次に引田香織氏のピアノ弾き語り「中原中也と茨木のり子」の後、一般財団法人日本詩人クラブ会長北岡淳子氏の挨拶。最後に実行委員長・田村雅之副理事の閉会の言葉で締めくくられた。会員104名。来賓15名、報道2名、一般53名、総計174名の参加があった。公益信託平澤貞二郎記念基金の協栄産業・平澤照雄氏も臨席された。新型コロナウィルスの影響で中止されていた詩祭が三年ぶりに開催されたことは嬉しく皆様に感謝申し上げたい。
7 現代詩ゼミナールと新年会
(根本理事)
2022年1月18日(土)午後2時からアルカディア市ヶ谷で開催すべく、講師の野沢啓氏、朗読者は須永紀子、日原正彦、松井ひろか、森雪拾、椿美砂子各氏、司会の秋山公哉、杉本真維子両氏、協力会員の鹿又夏実、沢村俊輔、ハラキン、服部剛各氏に依頼し、講演概要、朗読詩をまとめた冊子を制作した。残念ながら新型コロナ感染拡大のため中止となった。予定されていた野沢啓氏の講演「詩は未知の世界の構築であり、そのことばはすべて隠喩である」は会報166号に掲載された。
8 国民文化祭2021・わかやま
(佐川理事長)
第36回国民文化祭・わかやま2021〈いわで「現代詩の祭典」~はばたけ言葉、青あおと~〉が2021年11月13日(土)午後一時より、一条閣(旧若山県議事堂)で開催された。主催は文化庁・厚生労働省・和歌山県・和歌山県教育委員会・岩出市・岩出教育委員会・第36回国民文化祭、第21回全国障がい者芸術・文化祭和歌山県実行委員会・紀の国わかやま文化祭2021岩出市実行委員会・日本現代詩人会・一般財団法人日本詩人クラブ・わかやま市の会。岩出市在住の武西良和氏、中尾彰秀氏が中心になって準備。小・中高・一般の三部門で現代詩人会会長賞など、18人の受賞者を表彰。合計1433編の応募があった。選考委員長は細見和之氏、当会からは北原千代、橋爪さちこ両氏が担当。他に選者は、秋野かよ子、江口節、大場百合子、岡崎葉、金川宏、神田さよ、くりすたきじ、桑原広弥、武西良和、中尾彰秀、波野仁、松村信人の各氏。村瀬漢夫氏、河津聖恵氏の記念講演も行われ、朗読や講演では手話や音声画面表示もされた。
9 国際交流
(杉本理事の代理で田村副理事長)
今年度はコロナ禍により国際交流のイベント開催は見送らざるを得なかった。来年度は台湾の詩人をお迎えして開催したいが、感染状況により渡航や開催が難しい場合はズームによるご出演、または新たな形での国際交流を図りたい。
10 入会審査
(中井理事)
中井ひさ子入会担当理事の他に岡島弘子理事、北畑光男理事、鈴木正樹理事、長田典子理事の計5名の入会審査委員が当たり、36名の入会を決定、理事会の承認を得た。今期の審査は、計6回開催した。推薦理事には根本明理事にお願いし推薦理事の心当たりのない入会希望者の入会条件を整えることができ、ご協力に感謝したい。日本現代詩人会に相応しい方々が独自性のある作品で入会してくれた。これも会員、理事各位のご紹介ご尽力のお陰だと感謝している。
11 各地活動への後援賛助
(佐川理事長)
2021年9月から2022年6月まで次の9県の後援賛助を行った。
岩手県詩人クラブ、千葉県詩人クラブ、群馬詩人クラブ、青森県詩人連盟、茨城県詩人協会、兵庫県現代詩協会、石川詩人会、埼玉詩人会、横浜詩人会。
12 ホームページの運営
(秋理事)
2015年12月25日にリニューアルオープンし、順調に訪問者、閲覧数が増加している。これまでに作成されたページは英語版を含め140ページ以上。イベント告知、H氏賞・現代詩人賞の候補詩集公開と受賞決定の速報。会報と共有した情報公開。会員外の新鋭詩人発掘をめざす投稿欄の作品受付、入選・佳作選評公表。英語版は石田瑞穂氏が担当。新たに検索機能を設置。新しいタイトルデザインを会員である岩佐なを氏に依頼。投稿欄には、海外からの投稿もあり国内でもインターネット上の若い詩人たちを中心に浸透してきているようだ。フェイスブック、ツイッターでも随時更新を行った。詩投稿欄では第21期~第25期まで選者は上手宰、片岡直子、福田拓也各氏。第24期~第27期までの選者は草間小鳥子、塚本敏雄、山田隆昭各氏。2022年第6回日本現代詩人会投稿欄「新人賞」と「新人」は3月19日(土)のズーム会議により決定した。各期ごとに入選・佳作それぞれ5名程度。
13 子どもへの詩の普及活動
(長田理事)
2021年度から新たに立ち上げた。具体的には子どもを対象とした詩の普及活動の実践例をホームページに紹介したり全国の子どもを対象にした詩の募集要項や結果などを、リンクを貼って紹介したりする。
14 創立70周年記念事業―地域記念イベントについて
(新延理事)
日本現代詩人会は1950年に北川冬彦、安西冬衛、村野四郎など43名で発足した歴史があり、2020年1月21日に創立70周年を迎えた。今までの活動を見直し今後の発展を模索するために記念アンソロジー刊行とともに地域記念イベントの開催が決定された。全国を6地域に分け、各地の詩人の活動や詩の活性化に加え次代に伝えてゆくべき若い人たちへのアピールをはかることを意図した。2020年初頭からなるコロナ禍により参加者の皆様の健康・安全面を最優先に考えた結果、2019年の三国でのプレ・イベント以外は全て中止となった。各地で大変なご努力で様々な計画を立て準備をしていただき満を持してのイベントであっただけに残念だ。関係者の皆様に対して大変申し訳ない気持ちでいっぱいである。今後、理事会の議論を経て75周年あるいは80周年という節目をとらえ、再度、新たなイベントにチャレンジしていきたい。70周年とは別に東日本ゼミナールを来年開催できるよう準備中。
Ⅱ 会計報告
1 2021年度収支決算報告
(根本理事)
根本理事より2021年度収支決算の報告が項目ごとになされた。
2 会計監査報告
会計監査の根本正午監事、斎藤菜穂子監事が会計が正当に執行されたことを確認した旨報告された。
Ⅲ 議案
1 2022年度収支予算案
根本理事より2022年度収入支出予算案が項目ごとに提案された。
2 2022年度事業計画(案)
佐川理事長より提案された。
Ⅳ 報告事項
1 国民文化祭の予定(佐川理事長)
2022年・第37回国民文化祭は、沖縄県宮古島で「美ら海おきなわ文化祭2022 詩(ことば)の祭典~言霊 海を越えて」として10月29日(土)JTAドーム宮古島で開催予定。第38回は石川県、第39回は岐阜県と続く。
2 年会費納入状況
(中田理事)
会員の皆様のご協力により、昨年度同様、年会費の予算目標に近づく納入状況。滞納者には「年会費ご納入のお願い」を送っている。振り込みの際は住所・氏名を楷書で明確に書いていただきたい。
3 慶弔関係
(北畑理事)
会則第10条により会員が亡くなられたときは弔慰文、弔慰金を贈ることになっている。近年は単身者や施設で生活する会員も増えており連絡がなくお悔やみが遅れてしまうことがある。情報を担当理事または理事長にお願いします。
4 会員の入退会及び在籍数
(長田理事)
入会36名、退会28名、物故会員23名、名誉会員を含む総数1032名。昨年同期比15名減。
(記録・長田典子)
総会出席者(50音順・敬称略)
青木由弥子、秋亜綺羅、阿部敏夫、石川厚志、大塚常樹、岡島弘子、岡本勝人、長田典子、尾世川正明、川中子義勝、北畑光男、小林登茂子、斎藤菜穂子、佐川亜紀、沢村俊輔、鈴木正樹、曽我貢誠、高塚謙太郎、田村雅之、塚本敏雄、椿美砂子、寺田美由記、戸台耕二、中井ひさ子、中田紀子、新延拳、西畠良平、根本明、根本正午、野木ともみ、春木節子、春木文子、原かずみ、原詩夏至、原田道子、林新次、三ヶ島千枝、峯澤典子、宮崎亨、宮田直哉、八木幹夫、山田隆昭、雪柳あうこ、渡辺めぐみ、渡ひろこ
総会出席者 45名
委任状 457名(初め出席で委任に変更した人も含める)
合計502名 (寺田美由記)
現代詩ゼミナール&新年会 2020開催
「鮎川信夫のこと」平尾隆弘氏講演
会員による朗読とスピーチ
左から、挨拶する黒岩隆会長、講演する平尾隆弘氏
左から、司会の根本明氏・草野理恵子氏、会場風景
去る1月18日(土)恒例の現代詩ゼミナールと新年会がアルカディア市ヶ谷で盛会裏に開催され、雪交じりの雨のなか85名の方々(出席者別掲)が出席されました。
ゼミナールは、14時より16時30分まで、7階・琴平の間で開催。司会進行は根本明、草野理恵子両氏が担当。
黒岩隆日本現代詩人会会長より、新春の祝辞とともに「今年の1月21日に、日本現代詩人会は満70歳を迎えます。その創立70周年記念事業として、アンソロジーの発行と地域別記念イベントがございます。また〈地方の時代〉として、各地の詩人の活躍、詩の活性化を図り、とりわけ若い世代の詩人たちの発掘を期待して、全国6か所で、福井三国(プレイベント)と東京(日本の詩祭)を加えれば8か所で、記念イベントが予定されています。私も10月に詩祭in三国に参加いたしました。日本現代詩人会賞をお渡しする折、朗読された小学生や高校生の部の受賞作の新鮮さに目を見開かされました。地方ですくすくと若い詩人たちが育ってくる予感を覚え、嬉しいかぎりでした。」と未来の詩界へのお言葉がありました。
根本明氏より、平尾隆弘氏のプロフィールのご紹介があり、一時間の講演をいただきました。(講演内容は別掲)
詩朗読とスピーチは休憩後に行われました。朗読者と作品名は以下のとおりです。(スピーチ内容は省略)
秋山公哉「カエル跳び」「影を探す」
壱岐 梢「お先に」「自由研究」「イチジク」「ふゆ」「編む」「セーター」「ここに」「樹念日」
長田典子「Take a walk on the wild side-Loureedに捧げる」
下川明「Missile」「炎のなかで」「わたしは息」
白井知子「ダブリーズの古い古いバザール」
房内はるみ「窓辺にいて」「春のまがり角」
魅力溢れる声に聴き入りました。閉会の辞は中井ひさ子ゼミナール担当理事。講演者へ朗読、聴講の皆様へ感謝の言葉で現代詩ゼミナールは終了しました。
新年会は17時より19時まで6階・伊吹の間で、和やかに開催されました。司会進行は、柏木勇一、峯澤典子両氏。山田隆昭理事長より開会、新年の挨拶。
北岡淳子日本詩人クラブ会長より70周年への祝辞をいただき、鮎川信夫氏に触れ現代の社会情勢のなかで詩人の果たすべき役割について話されました。
新藤凉子日本現代詩人会前会長より、新年の祝辞に続き講演で感銘をうけられたなかで「詩人は自分を救えるか」は詩人の大切な課題と述べられました。
会場に垂れ幕を制作してくださった秋亜綺羅前理事長による乾杯の音頭。
川中子義勝日本詩人クラブ前会長より祝辞をいただき、現代詩人会、詩人クラブ両会が70周年を迎え、手を携え共に発展を、と期待を述べられました。
北畑光男日本現代詩人会元理事長、佐相憲一日本詩人クラブ理事長、両氏よりあたたかな祝辞をいただきました。ご登壇、スピーチされた方々は、池田瑛子(射水市)、植木信子(長岡市)、砂川公子(金沢市)、宮内洋子(日置市)、吉田隶平(福山市)各氏、会員になられた原葵氏。宴の最後に柏木勇一氏が「蒙古放浪の歌」を披露され、会場は懐かしい空気につつまれました。田村雅之副理事長の閉会の辞で新年会は盛会のうちに終了しました。
左から、佐相憲一氏、川中子義勝氏、新藤凉子氏、北岡淳子氏、中井ひさ子氏、白井知子氏、長田典子氏、秋山公哉氏
左から、池田瑛子氏、北畑光男氏、秋亜綺羅氏、司会の柏木勇一氏・峯澤典子氏、房内はるみ氏、下川敬明氏、壱岐梢氏
現代詩ゼミナール・新年会出席者
(敬称略 *両会出席者)
相沢正一郎*、青木由弥子、秋亜綺羅*、秋山公哉、麻生直子、石川厚志*、池田瑛子*、壱岐梢*、植木信子*、植村秋江、植村初子*、大掛史子、岡本勝人*、長田典子*、尾世川正明*、柏木勇一*、鹿又夏実、川中子義勝*、北岡淳子*、北畑光男*、曲山浩、草野理恵子*、黒岩隆*、小島きみ子*、小林稔*、斎藤菜穂子*、坂本登美*、佐川亜紀*、佐相憲一*、佐藤美樹、塩野とみ子*、下川明*、白井知子*、新藤凉子*、杉野穎二*、杉本真維子*、砂川公子*、関中子*、曽我貢誠*、田井淑江*、高市順一郎*、田村雅之*、塚本敏雄*、常木みや子、中井ひさ子*、中田紀子*、新延拳*、根本明*、根本正午*、服部剛*、浜江順子*、林洋子*、原葵*、原詩夏至*、春木文子*、樋口忠夫*、平尾隆弘*、広瀬弓*、房内はるみ、藤本敦子、古谷鏡子*、堀江泰壽*、真崎節*、松沢桃、水島きょうこ*、水島英己*、峯澤典子*、宮内洋子*、宮尾壽里子*、宮崎亨*、宮地智子、山岡遊*、山田隆昭*、山本博道*、結城文*、吉田隶平*、渡辺恵美子、渡辺めぐみ*
一般―斎藤瑤子、谷口朋美、富田康成*、内藤恵子、樋口良澄、星澄子、八木まどか
「恋をすれば──村上昭夫の詩篇より。」
黒岩 隆氏講演
名詩集「動物哀歌」1冊を残し急逝した村上昭夫に、恋の歌がありました。昭夫はふさ子氏と結婚した翌年、結核で亡くなっています。
『恋をすると』 恋をするとまっすぐに歩けなくなる/そう言いながら倒れていった詩人がある⊘恋をするとほんとうの道が分らなくなる/そう言いながら/彼は一層はげしい恋を/宇宙のなかに燃やし続けた/どうかマジエル様/あらゆるいきものの幸いを捜すそのためならば/私のからだなど/なんべんひき裂かれてもかまいませぬ⊘恋をすると見えるものが見えなくなる/けれどもそのことが/ほんとうの恋ではないのだとしたら/私は私のいのちを/それこそ何遍賭けてもいい⊘恋をするとすべての願いがだめになる/そう恐れながら/私はあのまっくらな虚空のなかを/何処までも行かなければいけないのだ
私はまず、最初の一行に魅かれました。恋の本質をついているからです。激しく恋をすると、誰でも、まっとうではなくなるのです。得体の知れない熱情あるいは、思い込みに左右された、非日常に迷いこむのです。〝倒れていった詩人〟は昭夫本人でしょう。そこに、この詩のリアリティがあります。そして、第2連では、恋はいっそう激しくなり、宇宙にまで拡がります。第3連では、宮沢賢治の短編「烏の北斗七星」の中の烏の大尉の悲痛な祈り〝どうかマジエルさま〟がそのまま挿入されています。昭夫の恋は、あらゆるいきものの幸いを捜すためには!と普遍の愛に昇華されてゆくのです。第4連が秀逸で、〝見えるものが見えなくなる〟ことこそ、ほんとうの恋である、ほんとうの恋のためには、何遍でも自分の命を賭けてもいい と言い切るのです。
古来、男とは、苦しい恋の成就のためには、何でも賭けると言い出すいきものではありました。たとえば、黒田三郎の、詩集「ひとりの女に」の中に、『賭け』という詩があります=美しくそう明で貞淑な奥さんをもらったとて/飲んだくれの僕がどうなるものか=ああ そのとき この世がしんとしずかになったのだ=僕は見たのであるひとりの少女を=一世一代の勝負をするために 僕はそこで何を賭ければよかったのか=僕は/僕の破滅を賭けた/僕の破滅を/この世がしんとしずまりかえっているなかで/僕は初心な賭博者のように/閉じていた眼をひらいたのである。そして、最終連、すべての願いを失う恐れに震えながら、虚空の闇を突き進む、果てしない恋の孤独を唄っています。ふさ子の大手術の際、東北の三月初めだというのに、なんと水垢離をとって、その全快を連夜祈り続けた昭夫が、ここにいます。最後まで、病、結核と戦い、まさに我が身を賭けて、女人を愛した、痛切で、清らかな詩人がここにいます。
それにしても【恋をすると】昭夫も黒田三郎も、命や破滅を賭けると歌いましたが、そんな時、相手の女性はどんな答えを返したのでしょうか??最後に、未だばりばりの現役女性詩人、新藤凉子さんの詩を紹介します。詩集「ひかりの薔薇」から『遅い』〝あの帽子は/わたしがころんだすきに/波にのまれてしまったのです⊘ひろってください=あなたが一生懸命/手を伸ばしたのはわかっています/今日は 海の水がおこっている日/あなたをさえ 波がのみこもうとしている/けど おそれずに/あの帽子をひろってください⊘わたしが願ったのは/帽子をとりもどすこと/ではなかったけれど〟男は悲しいですね。女は永遠にミステリアスですね。それでも、会場の詩人の皆様、恋をしましょう。恋をして、喜んで、苦しんで、最後に、草の葉についた、煌めく朝露のような一篇の詩を手に入れてください。(黒岩 隆)
三浦雅士氏 講演
日本語の詩人であること
戦後詩という語が生きていた頃、詩人であるよりもまず社会人である自覚を持つよう喧伝されたが、これは嘘だ。詩人は何よりも詩人であることを自覚すべだ。たとえば画家や音楽家であることの自覚に比べれば、芸大教授であることの自覚など何ほどのこともない。詩は社会的自覚を述べる場ではない。
詩人は詩人として恥かしくないように生きること。顔、たたずまいに品格を持つこと。人生は作品だ。品格は書に出るが、顔にも出る。
中也に「一つのメルヘン」という詩がある。「秋の夜は、はるかの彼方に、/小石ばかりの、河原があって、/それに陽は、さらさらと/さらさらと射しているのでありました。」が第一連。鮎川信夫に「死んだ男」という詩がある。「たとえば霧や/あらゆる階段の足音のなかから、/遺言執行人が、ぼんやりと姿を現す。」が第一連。似ている。ともに複式夢幻能と同じ構造を持つ。平林敏彦に「廃墟」という詩がある。「蝶がとんでいる/なにごとも起らぬ痴呆のような/たそがれの原を/きな臭い焼跡の風のなかを」が第一連。
中也の詩は一九三六年、鮎川四六年、平林四九年。戦争を挟むが、十数年の間に書かれている。みな恐ろしいほど日本語の伝統のなかにある。現代詩史は書き直されるべきだ。
この半世紀以上、詩は思想を持たなければならないとやみくもに言われてきた。パスカルやニーチェのような思想ではない。簡単にいえばマルクスの思想、左翼的、革新的な社会批判、政治批判だ。だが、そんなものは詩ではない。
中也、鮎川、平林の詩を並べてわかるのは、そんな思想より、日本語の伝統のほうが強かったということ。日本語に内在する様式、それにともなう思想が、詩人の人生を通して噴出したということだ。吉本隆明の「固有時との対話」も同じだ。
日本語万歳というのではない。
知られているように、一九八〇年代の分子生物学の分析によって、現生人類の起源はほぼ二十万年前のアフリカ、それが紅海、アラビア海沿岸を通ってユーラシアへと足を踏み入れるのが八万年前、インドに達し、東南アジアに達するのが六万年前、日本に達するのが四万年から三万年前であるということが明らかになっている。言語の起源はほぼ六万年前。諸言語の寿命は二、三千年。
日本語にしても万葉古今、芭蕉で大きく変わっている。中国の影響が大きいが、中国語もクレオールなのだから有難がることはない。芭蕉が俳諧で漢詩を日本の詩的言語に熟成し、それがあって明治以降の西洋文化輸入において漢字二字熟語が簡単に成立した。中国も逆輸入した。
これはどういうことか。中也、鮎川、平林の例は日本語万歳を意味するのではなく、言語万歳を意味するということだ。場が設定され、死者が登場し、やがて消えるというのは、万国共通、言語そのものに共通する。言語を持つものはみな死に直面しそのために冥界下降譚をでっちあげる。複式夢幻能だけではない。「白鳥の湖」のようなバレエも同じ。
この言語の宇宙に直面するのが詩人だ。詩人つまり言語感覚が異常に鋭いものだけが言語の宇宙に直面できるのである。詩を書くことも重大だが、詩人として生きることのほうがもっと重大なのは、言語を生きる覚悟が必要だからである。
言語の運命を生きること。だが、それは日本語なら日本語、英語なら英語という母語を通してしか達成できない。詩人は母語の詩人としてしか生きられない。日本語の詩人であるとはそういうことだ。
(日本現代詩人会の2018年度通常 総会が8月 25 日(土)午後1時 30 分か ら、アルカディア市ヶ谷で開催。議事に先立ち、 新藤凉子会長が講師紹介を行い、三浦 雅士氏が「日本語の詩人であることに ついて」というテーマで講演した。)
日本の詩祭 2018 開催
一生忘れない、一行の詩を見つけよう。
H氏賞・現代詩人賞贈呈、先達詩人顕彰
5月27日、ホテルメトロポリタンエドモント
現代詩人賞を受ける 清水茂氏 H氏賞を受ける 十田撓子氏
日本現代詩人会最大のイベント「日本の詩祭2018」が、「一生忘れない、一行の詩を見つけよう。」というサブテーマで、5月27日(日)、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで開催された。実行委員長を一色真理理事がつとめ、秋亜綺羅理事長が開会の挨拶。詩祭は二部構成で、13時からの第Ⅰ部では、H氏賞・現代詩人賞の贈呈式と、先達詩人の顕彰。それぞれの挨拶と詩の朗読があった。
一色真理実行委員長
第Ⅱ部は日本現代音楽協会と日本現代詩人会の初めてのコラボによるトークと現代音楽コンサートがあり、会場を魅了した。
18時から懇親会に移り、山本博道副理事長の閉会の挨拶で終了した。(詳細は1~7面。写真・動画撮影は光冨郁埜理事、鈴木茂夫(懇親会))
開会のあいさつの秋亜綺羅理事長
◇第Ⅰ部(司会・望月苑巳、藍川外内美)
初めに司会の望月苑巳氏と藍川外内美氏がそれぞれ詩祭の第Ⅰ部と第Ⅱ部の概要を説明した。
続いて開会の辞の中で秋亜綺羅理事長は、日本現代詩人会は再来年で創立70周年を迎える1100人の詩人達が集まっている団体だが、今日ここに集まった皆様全員が楽しい一日だったと思われることを願っていると述べた。
司会の望月苑巳、藍川外内美両氏
◇H氏賞贈呈式
第68回H氏賞の贈呈式が行われた。浜田優選考委員長は、各委員が既受賞詩集2冊を除く9冊の候補詩集の中から3冊ずつ選んだときに、全員が推し
たのが『銘度利加』であり、更に各自2冊ずつ選んだ際、自らの生まれ育った祖霊の声を聴くこととともに、テーマの大きさ、構成力の巧みさ、言葉遣いの鮮烈さで、本詩集が絶大な支持を得たと述べた。
浜田優選考委員長
また他に、生と実存の痛みを掘り下げる真摯な詩集だが単調で内省的な『標本作り』、自己愛ないしナルシシズムを「これがわたしのふつうです」と言い放つ批評性は頼もしいが、もっと言葉を極め自らの体験を超える視点を持つ必要がある『これがわたしのふつうです』、世界に向かってひらかれていて風通しが良く、長いが読ませる『数と夕方』も候補として議論され、最後に『銘度利加』と『数と夕方』が残り、決選投票5対2で受賞詩集が決定したとの経過報告を行った。
新藤凉子会長から『銘度利加』の著者十田撓子氏に賞状と賞金が授与された。
受賞の十田撓子氏と紹介の林浩平氏
受賞詩集について詩人で文芸評論家の林浩平氏は、十田氏とはメール友達だったが、詩集収録の「晴雨計商人」という詩を送られ、秋田の印刷所で私家版で詩集を出したいと相談された際に、きちんとした出版社で出す値打ちのある詩集だと感じ、思潮社の藤井一乃編集長に紹介したエピソードを話した。そして、本詩集は、十田氏の親しい亡くなられた方々の喪の作業としてのエクリチュールであるという印象があるが、十田氏は現在、詩やエッセイで受賞詩集以後の世界に確実に踏み出しており、十田氏の受賞はH氏賞の名誉であると受賞を祝福した。
十田撓子氏から受賞の言葉があった。十田氏は、詩集の舞台は自分が暮らしてきた秋田県鹿角市の大湯という町で、岩手県、青森県、秋田県にまたがり、南北朝時代から戦乱に負けた人々が住み着いて町が出来上がってきたという歴史があり、自分も含め中央なるものへの反抗心が根付いていると述べた。また、初めての詩集を出すにあたり、単なる愛着ではなく、やるせなく言い表せないような感情を持つこの土地について書かなければならない、死者と語り死者の言葉を写したいと思ってきたが、無垢な魂の状態に入るのに15年の時間を要した詩集であると明かした。
更に、無垢とは、単に穢れがないものではなく、哲学的思考や高度な技術的志向、及び実験という名の道楽的な遊び、言葉による寓話の増殖に抵抗し捨ててしまってもよいという境界を越えたところを目指したもので、鹿角に生きた人々の精神性を新たに私のこととして継承してゆくために、引き続き時間と空間の中を歩みつつ言葉の源泉へと辿って行きたいと語った。そして、林浩平氏、友人、知人、藤井一乃氏及び選考委員と日本現代詩人会会員への謝辞を述べた。
日本現代詩人会と思潮社からの花束
の贈呈があり、祝電の披露が行われた。
◇現代詩人賞贈呈式
野沢啓選考委員長
続いて第36回現代詩人賞の贈呈式が行われた。野沢啓選考委員長は、各委員が既受賞詩集1冊を除く10冊の候補詩集の中から3冊ずつ選んだときに、過半数に達する詩集がないまれに見る分散状態であり、更に各自2冊ずつ選んだ際も過半数の4票を取る詩集がなく、3票を取った詩集『一面の静寂』と『日毒』を中心に議論を重ねたと述べた。また、自分は『日毒』を推したが、優れたところがありながら言葉が生でレアな政治性が出ているとの批判があり、決選投票4対3で受賞詩集が決定したと報告した。
そして、『一面の静寂』は、ご自分が生きてこられた思いや旅の記憶や人との出逢いを真摯に冷静な筆致で書き、静かな感銘を与えるとし、過去を振り向くだけでなく、新しいものへの希望を提出する詩のスタイル及び若い芽を育てようとするホットな姿勢があることを称えた。
新藤会長から『一面の静寂』の著者清水茂氏に賞状と賞金が授与された。
受賞の清水茂氏と紹介の北岡淳子氏
詩人の北岡淳子氏が受賞者の紹介を行い、清水氏は子供のときから俳句を作り芸術的環境で育ったと述べ、詩を語るサロンにお招きし講演をしていただいたときに、自我に閉塞せず自己と世界との接点を見出し、世界の望ましい環境を整え、万物との共生の道を探ることが詩人の仕事であることや、同意をすることの大切さについて繰り返し述べられたと話した。そして、同意とは、相互の信頼関係が前提であり、各地で起こる紛争についても内面から人を動かす真摯な誠実な姿勢を持つこと及び、私達は自然の一部だが時が満ちれば満ちるものを受け取ってゆくという意味があると思われるとして、表題作の雪が全てを覆い存在の全ての故郷に帰るという内容は、世界情勢や詩人達の書くものについても問いかけているものだと述べた。
清水茂氏から受賞の言葉があり、受賞の知らせを寝耳に水のように感じたがありがたく思うと述べ、言葉について次のように語った。言葉は存在の前からあり、それが宇宙の言葉であり、粘土の塊の中に心が生まれたとき、その時間を言葉が待っていたのかもしれず、水や空気のように生きてゆく上で必要だった。ところが人間が誕生し時代が進むにつれ、人間は言葉を自分の欲望を実現するための道具に変えた。足尾銅山鉱毒事件や水俣病や原発の崩壊も人間のなせる技であり、言葉に様々な毒素が流し込まれ、差別用語が現れ、いじめが起こり、命のためのものである役割を失った。詩人は他者を蔑むためでなく、受け手が喜びや安らぎを感ずる言葉を差し出してゆきたい。
更に、美しい色彩画家のピエール・ボナールの「歌っている者がいつも幸福とは限らない」(幸福でなくてもいつも歌って聞かせることは大切だの意)という言葉を謝意に代えて紹介した。
日本現代詩人会他4名の方から花束の贈呈が行われた。
◇先達詩人の顕彰
新藤会長から八木忠栄氏に顕彰状と記念品の贈呈があった。
先達詩人 八木忠栄氏
続いて新藤会長から八木氏について次のような紹介があった。八木氏は、1941年越後生まれで、日本大学芸術学部在学中に第1詩集『きんにくの唄』を思潮社から刊行し、日本語としての柔軟さが評価され将来を嘱望された。卒業後思潮社に就職し、足で原稿の受注や入手を行う時代に16年間編集に携わり編集長も務めた。1962年には諏訪優、白石かずこ、吉増剛造、岡田隆彦、佐藤文夫達と共に詩とジャズの結合を目指した運動に加わり、これはやがて「ポエトリー・アット・ニューズ」として開催されていった。また70年代にはこれが諏訪優によって詩誌「天文台」に結集され、吉原幸子、白石かずこ、新藤凉子、中上哲夫、秋亜綺羅、吉増剛造、八木忠栄などの詩人達の輪が大きく広がっていった。八木氏は、アレン・ギンズバーグの影響もあり路上派と呼ばれた様々な詩を書き、思潮社退社後はセゾングループの要職に就き、詩集『雲の縁側』で現代詩花椿賞を、『雪、おんおん』で詩歌文学館賞及び現代詩人賞をダブル受賞し、2011年から2年間日本現代詩人会会長も務めた。
そして、これらの業績は全て、八木氏の温かく、ユーモアのある、才能のある人間性及び人格から来るものであり、学ばなければならないと述べた。
八木忠栄氏は顕彰を受け、まず「先達詩人」ということは未だによくわからない、知らせを受けてからかわれたのかと思ったと述べ、自分より業績の多い年齢的にもふさわしい人が沢山いる中でなぜ自分のところに来たのかわからないが、ありがたく頂戴したいとユーモアを交えて謝意を表した。
また、杖をついている事情を次のように語った。数年前に2万人に1人の国が定めた難病だという診断を受け現在治療を受けているが、原因不明で治療法がなく、いずれ動けなくなり、喋れなくなり、くたばってゆく。そういう自分と楽しみにつきあってゆきたい。歩くのが大好きで詩は手足で書くのが自分の持論だが、そろそろ休めということかもしれず、今日も妻と娘にサポートされて来た。しかし、まだ頭もしっかりし書くものもしっかりしているので、今日いただいた万年筆でまだまだ詩が書ける。
そして、病気の人も負けずに頑張ってくださいと明るく来場者に励ましの言葉を述べた。
その後、八木氏へ、日本現代詩人会、思潮社及び見附市図書館館長より花束の贈呈があり、祝電の披露が行われた。
最後に、十田撓子氏がH氏賞受賞詩集『銘度利加』の中から「殯」を、清水茂氏が、現代詩人賞受賞詩集『一面の静寂』の中から「哀悼詩 Y・Bに」をそれぞれ朗読した。受賞者及び先達詩人の心に残る言葉と詩に触れることができ、有意義に第Ⅰ部が終了した。 (記録・渡辺めぐみ)
◇第Ⅱ部 現代詩と現代音楽の出会い
共同企画=日本現代音楽協会
第Ⅱ部は、「現代詩と現代音楽の出会い」と題して日本現代音楽協会と日本現代詩人会の共同企画によるトークとコンサートが行われた。
近藤譲、松尾祐孝、司会の一色真理各氏
◇トーク
初めに、一色真理実行委員長の司会で、現代音楽の作曲家、評論家で日本現代音楽協会会長の近藤譲氏と現代音楽の作曲家、指揮者、音楽プランナーで日本現代音楽協会理事の松尾祐孝氏によるトークが、「言葉と音楽のあいだで」というテーマで行われた。近藤氏から、1930年に新興作曲家連盟という名で発足した団体が1946年に現在の日本現代音楽協会となったとの説明があり、1949年の日本現代詩人会の設立より19年も前に現代音楽という概念が確立していたことに、一色氏も驚きをあらわした。
しかし、近藤氏は、1920年代ぐらいからわからないものを現代音楽と呼ぶようになった傾向があり、音楽に現代をつけなくていいのではないかと思っていると話した。一色氏も、戦後、現代詩という言葉が使われるようになったが、難解で独善的であるとの批判があり、詩に現代をなぜつけなければいけないのかと多くの詩人が感じていると思うと応じた。
また、現代音楽も難解だと思うがどう思うかとの一色氏の質問に対し、松尾氏は、現代音楽にもいろいろなタイプの作曲家がおり、1人の作曲家がいろいろなタイプの曲を書くが、現代音楽の作曲家は聴いたことがあるような安心感を目指していないと述べた。更に、近藤氏は、ポピュラーミュージック(19世紀末、工場労働者の慰めとして、飽きないよう新しいテイストを少しずつ加えて作る再生産の原理で広がった音楽)を聴き慣れている人には耳慣れないことや、19世紀末より新しいものを芸術において追求する意識が強まり(芸術のための芸術)、聴き手が賛同するかどうかはどうでもよくなったことの2つが、わかりにくく、独善的だとの現代音楽のイメージが確立された原因であると述べた。
これに対し一色氏は、現代詩にもほぼ同じことが言えるとした上で、現代音楽には調和音がなく、メロディーもなく、不協和音ばかりで、作曲されても歌うことができないことが詩人としては不満だが、それはなぜかと尋ねた。松尾氏は、私達がメロディー、リズム、ハーモニーというある時代様式の音楽の三要素に飼い慣らされているのだと指摘した。近藤氏は、詩人は詩の音やリズムに繊細なエネルギーを払うので、詩に音楽をつけるのは詩に対する暴力であり、申し訳ないと思いつつ、音楽でもない詩でもない別のものが化学反応のようにできるという期待を持って詩に音楽をつけていると語った。
また、一色氏が、近藤氏の「線の音楽」という考え方は音を言葉や詩の1行と考えた場合現代詩の書き手には比較的理解しやすいのではないかと述べた際、近藤氏は、詩と音楽の最大の差は、詩は言葉を発した瞬間に常に意味がついてくるが、音楽は音に意味がなく、自由につなげやすく受け取りやすいことにあると述べた。そして、詩に音楽をつけるとき言葉に意味を獲得させてしまう難しさがあるとも述べた。最後に松尾氏が「現代音楽コンサート」について解説し、現代詩と現代音楽のそれぞれの特質についての奥深いトークが終了した。
近藤譲氏及び松尾祐孝氏に日本現代詩人会から花束の贈呈が行われた。
◇現代音楽コンサート
ピアノ・中川俊郎、ヴァイオリン・甲斐史子、バリトン・松平敬、ソプラノ・工藤あかね各氏
松尾祐孝氏をナビゲーターとしてコンサートが開始された。
オープニングパフォーマンスとして、現代音楽協会前会長の福士則夫氏の身体で表現する作品「手のための<てい
ろ>」(演奏=古川玄一郎、戸崎可梨、小川理仁、細野幸一)が上演された。
続いて現代音楽協会会員4名による歌曲作品が上演された。最初に橋本信氏が室生犀星の詩「犀川」に曲をつけた作品(ソプラノ=工藤あかね、ピアノ=中川俊郎)、次に同じく橋本信氏が一色真理氏の詩「町」に曲をつけた作品(ソプラノ=工藤あかね、ヴァイオリン=甲斐史子)が上演された。3番目に、蒲池愛氏が新藤凉子会長の「風の城」に曲をつけた作品(バリトン=松平敬、ピアノ=中川俊郎)、4番目に、小川類氏が北夙川不可止氏の詩「<<NUBATAMA>>」に曲をつけた作品(ソプラノ=工藤あかね、バリトン=松平敬、ヴァイオリン=甲斐史子、ピアノ=中川俊郎)、最後に松尾祐孝氏が松尾氏の父上の俳句「季寄せ」に曲をつけた作品(バリトン=松平敬、ヴァイオリン=甲斐史子)が上演された。また、アンコールとしてこのあと松尾氏が若い頃に谷川俊太郎氏の「じゃあね」という詩に曲をつけた作品(ソプラノ=甲斐史子、バリトン=松平敬)が上演された。
4人の作曲家の作品は、どれも印象深いメロディーがあり、様々な現代音楽の作法があることを感じさせ、会場を圧する力があった。
松平敬氏と工藤あかね氏に日本現代詩人会から花束の贈呈が行われた。
一色真理実行委員長の閉会の辞で第Ⅱ部が終了した。一色氏はその中で、これまで閉ざされた中で詩祭が行われてきたが、現代音楽協会と本格的にコラボをすることで、外部の世界を垣間見、現代詩とは何なのか、これから現代詩にどんな課題があり、どんな今後の展望を描けるのか、改めて見直す機会になったのではないかと述べた。
オープニング曲 手のための〈ていろ〉
◇懇親会
懇親会 司会・佐相憲一、山中真知子各氏
午後6時から会場を移して懇親会が行われた。司会は佐相憲一氏と山中真知子氏。新藤凉子会長が、詩祭の内容及び音楽が素晴らしかったと申し上げてお礼に代えたいとの開会の言葉を述べた。続いて来賓の挨拶があった。川中子義勝日本詩人クラブ会長は、ステージに立つ1人1人に一行の詩があったとして、清水茂氏、十田撓子氏及び八木忠栄氏への感謝の言葉を述べ、平澤貞二郎記念基金を代表して平澤照雄名誉会員は、日本現代詩人会にもっともっと若い人材を集めてほしいという要望などを述べた。新川和江氏の乾杯の音頭で宴となった。
歓談の合間に、遠方から来た会員の橘田活子氏、小笠原茂介氏、高橋玖未子氏、名古きよえ氏、左子真由美氏、瀬崎祐氏、長津功三良氏、池田瑛子氏、近岡礼氏、大林美智子氏、井崎外枝子氏、清水マサ氏及び非会員で十田撓子氏の所属同人誌の寺田和子氏がスピーチをした。また、新入会員の為平澪氏及び斎藤菜穂子氏も新入会員挨拶を行った。山本博道副理事長が閉会の言葉を述べ、名残を惜しみながら午後8時に懇親会が終了した。(記録・渡辺めぐみ)
会場風景
◇「詩祭2018」会員出席者
新藤会長、清水茂、浜田優、十田撓子、新川和江、山本博道(一人おいて)、八木忠栄、菊田守各氏
来賓の平澤照雄氏、新藤会長、来賓の新川和江、来賓の川中子義勝各氏
閉会のことば・山本博道副理事長、長津功三良、小笠原茂介各氏
十田撓子、清水茂、八木忠栄
菊田守、安藤元雄、新川和江、浜田優、野沢啓、平澤照雄
新藤凉子、秋亜綺羅、鈴木豊志夫、佐相憲一、浜江順子、渡辺めぐみ、山本博道、海埜今日子、平井達也、渡ひろこ、藍川外内美、池田康、朝倉宏哉、鈴木茂夫、岡田ユアン、秋山公哉、山本聖子、光冨郁埜、滝川ユリア、尾世川正明、望月苑巳、小林登茂子、以倉紘平、塚本敏雄、広瀬弓、柴田千晶、坂多瑩子、岡野絵里子、中井ひさ子、竹内美智代、山田隆昭、長津功三良、酒井力、清水マサ、沢村俊輔、森水陽一郎、植村秋江、原田道子、一色真理、春木節子、麻生直子、中本道代、安藤一宏、こまつかん、井上尚美、菅沼美代子、為平澪、山中真知子、大掛史子、昼間初美、颯木あやこ、伊藤悠子、北岡淳子、村尾イミ子、松沢桃、三ヶ島千枝、山川宗司、方喰あい子、田中裕子、高橋次夫、塩野とみ子、房内はるみ、鈴木粥、名古きよえ、牧田久未、香月ゆかし、原利代子、佐藤文夫、大木潤子、ささきひろし、原島里枝、天野英、瀬崎祐、岡島弘子、下川明、竹内英典、長田典子、林田悠来、高島清子、渡辺恵美子、若山紀子、松井ひろか、橘田活子、小網恵子、新井啓子、藤本敦子、左子真由美、草野理恵子、富永たか子、真崎節、熊沢加代子、葵生川玲、戸台耕二、鈴木東海子、福島純子、こたきこなみ、長谷川忍、金井雄二、中村不二夫、安楽正子、鈴木比佐雄、加藤千香子、関口隆雄、井崎外枝子、柏木勇一、近岡礼、曽我貢誠、高橋冨美子、なべくらますみ、鈴村和成、高橋玖未子、樋口忠夫、新延拳、市川愛、中田紀子、太原千佳子、関中子、北畑光男、小山田弘子、石川厚志、田井淑江、宮﨑亨、今泉協子、鈴切幸子、池田瑛子、水谷有美、服部剛、小笠原茂介、川崎芳枝、中島悦子、大林美智子、井田三夫、小野ちとせ、吉田ゆき子、田村雅之、鈴木昌子、葉山美玖、岡本勝人、甲田四郎
「来賓等出席者」
川中子義勝、林浩平、清水須巳、北夙川不可止、中川俊郎、甲斐史子、松平敬、松尾祐孝、小川類、古川玄一郎、橋本信、工藤あかね、蒲池愛、戸崎可梨、小川理仁、細野幸一、八木信子、八木純子、大原進太郎、岡田洋一、桂星子、横山智教、萱原里砂、近藤譲、清水俊、清水翔、前川雪子、高島鯉水子、高橋啓介、大日向英樹
・会員出席者 149名
・来賓・報道 30名
・一般参加者 50名
・懇親会出席 132名
●東日本ゼミナール・新年会開催
「夫・車谷長吉」 高橋順子氏講演
写真左から講演する高橋順子氏、あいさつをする一色真理氏
寒波到来の一月十三日、底冷えの午後にも関わらず、早稲田奉仕園において現代詩ゼミナール(東日本)は、六十六名の会員と一般参加者を迎えての開催となりました。司会進行は塚本敏雄さん・中本道代さんです。
新藤凉子会長の開会のことばは、講演者との深い交誼もあり、温かい紹介でした。詩・小説やエッセーで活躍中の高橋順子さんが、上梓した『夫・車谷長吉』を基に「詩と小説の間」という副題での講演です。暖房装置の故障により室温が上がらず、急きょカイロが配られるなど、参加者には厳しい二時間となりました。が、文学と夫婦の修羅という興味深さによってか、寒さをしのぐ熱気が満ちていたようです。
高橋さんはまず詩とは〈疑うこと〉と示し、散文とは次元が違うという端的な導入でした。そして『夫・車谷長吉』を三回忌後に纏めた契機を、〈書いてしまえ〉という彼の声に後押しされたと明かします。小説家としての夫の在り方と、妻の緊張感に満ちた位置を伝え、十一年余の激動の日々が彼の小説と高橋さんの詩を生み出した様子が浮かびます。ときにユーモアを塗して伝えられたことは、高橋さんの詩を理解するうえにも手掛かりとなります。
さらに車谷氏の小説『漂流物』『武蔵丸』『変』などに触れ、私小説家としての日常と、妻となった自分も〈同罪〉〈共犯者〉だとの覚悟にいたった顛末が、迫力をもって語られました。彼にとり小説が自分の存在を問う〈生への祈り〉であるのに対し、高橋さんは詩が〈祈りに触れる〉ものだと通底するものを確信したそうです。車谷氏が書き終えると混迷が深まる様を見守った高橋さんが、人間の業を描く小説に対し詩は喜びをもたらすものだと逆説的に到達したという経緯は、多くの示唆を与えます。基本的に彼は〈耳の人〉で、土俗的な語りの文学として成立していったようですが、高橋順子さんには響きを確かめる詩が必然になったのでした。これらは参加者の質問への答えとしても、丁寧に説かれました。
写真左から司会の塚本敏雄・中本道代両氏、会場の様子
詩の朗読は暖房が復旧しないため、別会場でとなりました。移動にも時間が必要でしたが、小会議室でかえって肉声が届く、顔が見えるという利点もあったようです。草野理恵子さん「夜/公園」「対岸の床屋」、黒岩隆さん「海鳴り」「青蚊帳」、清水博司さん「海峡」「杜黙」、竹内美智代さん「テゲテゲ」「汽車」、中井ひさ子さん「置いてきたもの」「死んだふり」、岩切正一郎さん「書物・砂・呼吸」「眠り・骨・血」などが表情豊かに朗読されました。閉会のことばは、一色真理さんでした。
五時から再び会場を移し、五十三名の参加で新年会となりました。司会進行は、光冨郁埜さん・山本聖子さんです。開会のことばは以倉紘平さん、乾杯は菊田守さんで歓談・会食が始まりました。秋亜綺羅理事長の挨拶が手違いにより抜け、後に文書の形でとなりました。続いて遠方から参加された長崎や北海道の会員・新入会員の紹介で盛りあがりました。来賓挨拶は、五月の詩祭に参加される現代音楽家協会理事・松尾祐孝さん。ゼミナール担当理事麻生直子さんからの挨拶などがありました。山本博道さんの閉会のことばで盛会のうちに終了しました。
◆東日本ゼミナール出席者
(2018年1月13日・敬称略)
会員―菊田守・新藤凉子・浜江順子・山田隆昭・渡辺めぐみ・光冨郁埜・宮崎亨・鈴木昌子・草野理恵子・中井ひさ子・秋亜綺羅・春木節子・中本道代・塚本敏雄・鈴木豊志夫・以倉紘平・一色真理・若山紀子・原詩夏至・佐々有爾・菅原みえ子・清水博司・橘田活子・宮城ま咲・竹内美智代・福島純子・天野英・林田悠来・麻生直子・八木幹夫・北畑光男・真崎節・伊藤悠子・細田傳造・大掛史子・秋元炯・瀬崎祐・黒岩隆・曽我貢誠・鈴切幸子・藤本敦子・熊沢加代子・常木みや子・植村秋江・谷合吉重・藤井優子・広瀬弓・結城文・小野ちとせ・小山田弘子・関中子・春木文子・鈴木正樹・鈴木東海子・岡島弘子・中田紀子・新延拳・塩野とみ子・岩切正一郎・波平幸有・田村雅之・山本博道・田井淑江・大木潤子・小勝雅夫
一般―岡安惠子・浅野幸子・真崎美奈子・松井康之
◇「西日本ゼミナール・滋賀」のご案内
◇テーマ 「近江で 詩を刻む 詩を映す」
◇主 催 日本現代詩人会西日本ゼミナール・滋賀実行委員会
◇共 催 近江詩人会
◇開催日 2018年2月18日(日)
受付13:00~ 開会13:30~
◇会 場 ホテルニューオウミ 亀の間
TEL 0748・36・6666
住 所 滋賀県近江八幡市鷹飼町1481(JR近江八幡駅前)
◇会 費 一〇〇〇円(会員・一般共)
〈プログラム〉
第一部 ゼミナール 13:30~17:00
開会挨拶:日本現代詩人会会長 新藤凉子
近江詩人会会長 竹内正企
講 演:1苗村吉昭氏(日本現代詩人会会員)
「失われた現代詩への信頼を求めて
――大正期の民衆詩派からの投射」
2山本竜門氏(集仏庵庵主仏師・近江詩人会会員)
「詩、木を彫るごとく――NHKこころの時代から」
ライア演奏:浅山泰美氏(詩人)
閉会挨拶:日本現代詩人会イベント総括担当理事 一色真理
第二部 懇親会 17:30~19:30
会費 六〇〇〇円
司 会:近江詩人会 森 哲弥・北原千代
開会挨拶:日本現代詩人会理事長 秋 亜綺羅
閉会挨拶:日本現代詩人会西日本ゼミナール担当理事 以倉紘平
*一部と二部の閉会の挨拶をする理事を事情により交代しています。
昨年2月の西日本ゼミナールin沖縄のレジュメについて、以下の通り訂正させていただきます。関係者の皆さまに深くお詫び申し上げます。(元沖縄実行委員長・宮城隆尋)
平成28年、沖縄で開催された「西日本ゼミナールin沖縄」の資料編の平敷武蕉氏の講演「時代と向き合う文学」のレジメの中に、『歌壇』2015年11月号からの引用文がありますが、執筆者の名前が抜けていました。執筆者「屋良健一郎」をご記入ください。訂正しお詫びいたします。
全体テーマ「詩のみなもとへ」
主催:日本現代詩人会 西日本ゼミナール・高知実行委員会
協賛:高知詩の会 高知ペンクラブ 高知文学学校
後援:高知県立文学館 高知県文化財団 高知市文化振興事業団
高知新聞社 中四国詩人会
日時 2017年(平成29年)2月25日(土) 受付13時より
会場 高知会館(高知市本町5丁目 TEL 088-823-7123)3F飛鳥の間
参加費 500円
お問い合わせ・お申し込み先
781-0011 高知市薊野北町3-10-11 林嗣夫 (TEL 088-845-0259)
プログラム
第一部 ゼミナール 13:30~17:00
1.開会挨拶 日本現代詩人会会長:以倉紘平
高知実行委員会代表:長尾 軫
2.講演1 「詩作への動機をめぐって」武藤整司(高知大学教授)
3.朗読 森原直子(愛媛) 水野ひかる(香川) 清水恵子(徳島)
べつのしかたで(高知) 高瀬草ノ介(高知)
4.ティーターム(休憩 交流 詩と版画のコラボ展)
5.講演2 「詩を生きる、ということ」林 嗣夫(日本現代詩人会会員)
6.閉会挨拶 日本現代詩人会西日本ゼミナール担当理事:瀬崎 祐
第二部 懇親会 会費 5000円 17:30~19:30
1.開会挨拶 日本現代詩人会理事長:新延 拳
2.乾杯 高知文学学校運営委員長:猪野 睦
3.閉会挨拶 日本現代詩人会西日本ゼミナール担当理事:北川朱実
日本現代詩人会西日本ゼミナールin沖縄(日本現代詩人会、沖縄実行委員会主催)は二月二十日、「現在、沖縄で文学するということ」をテーマに、ロワジールホテル那覇で開かれた。参加者は百六十人余。以倉絋平日本現代詩人会会長、宮城隆尋沖縄実行委員長があいさつし、平敷武蕉氏(俳人、文芸評論家)と八重洋一郎氏(詩人)が講演した。
平敷氏は沖縄現代詩の現状について「『基地と戦争ばかり描いている』との指摘があるが、意外と基地や戦争を題材とした作品は少なく、特に若手にその傾向が強い」と指摘。「その中で琉球語や民謡、古謡を詩に導入することで詩のリズムとイメージ、言葉の広がりを取り戻そうとしている詩人がいる」と強調した。「日本の現代文学で社会派が衰えて久しい中、豊かな可能性を見せているのが沖縄の詩だ。矛盾に目を据えて表現を営むことは、人間はいかに生きるかという叫びだ」と述べた。一方で「思想や批評性に比して詩の技法や修辞が軽視されてきた」などの指摘があることも紹介した。
八重氏は地球温暖化問題、核兵器に囲まれている現状などを挙げて「戦争は必ずエスカレートし、世界戦争に拡大する。現代は人類の滅亡を常に感じさせる」と述べた。「詩はいかに対応するか。歴史、自然へのやわらかい感受性、他者への想像力、存在への深い共感が必要だ」と指摘。詩「詩表現自戒十戒」などを朗読し「全感覚、全言語能力を挙げて詩を書き、問題の多様さと深刻さによって明晰な発狂状態にいたることだ」と結論づけた。
朗読には三十代から七十代の詩人が登壇。独自の風土を醸す島々の言葉を交えた。作品は高良勉氏が「老樹騒乱」、トーマ・ヒロコ氏が「パスタを巻く」「わたしたちの10年」、伊良波盛男氏が「何もない島の話」、中里友豪氏が「カラス」。幕間に沖縄工業高専の学生たちがエイサーを演舞した。日本現代詩人会理事の北川朱実氏が閉会のことばを述べた。
交流懇親会は新延理事長のあいさつに続き、田村雅之副理事長が乾杯の音頭を取った。第十五代琉球王府おもろ伝承者の安仁屋眞昭氏らによるおもろ詠唱があり、県立芸術大学の高嶺久枝教授や学生たちによる琉球芸能が披露された。終了後は慰労会も催された。
沖縄実行委員会は事前に沖縄の五十人余が参加したアンソロジー「潮境」を発行。詩人たちの交流会を催し、記者会見や地元紙への寄稿で来場を呼び掛けた。(報告者・宮城隆尋)
東日本ゼミナール・新年会開催2015
会員数1067人(前期比21人増)
新名誉会員に高良留美子氏・辻井喬氏
日本現代詩人会の2014年度通常総会が8月23日(土)午後1時30分から、東京・西早稲田の早稲田奉仕園で開催された。会員の出席は64名、有効委任状439名、計503名で、会員数(6月30日現在)1067名の3分の1を超え、会則第28条により総会は成立した。
会場受付は会員の沢村俊輔氏と小野ちとせさん。総会の司会は、山田隆昭、杉本真維子理事。北畑光男理事長が開会の言葉を述べ、財部鳥子会長が「詩人会は何のためにあるのか。詩人会が発展するだけでは意味がない」と問いかけ「宇宙的視野に立って良い詩を書いていきたい」と挨拶。2014年度事業計画などが承認された。議事に先立ち、以倉紘平氏による「平家物語―鎮魂の構造」の講演があった。
議長団に森野満之氏と山本聖子氏が選出された後、昨年度総会以降今年6月末までに逝去された21名の物故会員の名前が北畑理事長によって読み上げられ、黙祷を捧げた。
なお、2013年度第4回理事会(13年10月17日)で名誉会員に推挙された高良留美子氏、辻井喬氏(推挙後の11月25日逝去)についても、満場一致で承認された。財部会長から、高良留美子氏に推挙状と記念品が、故辻井喬氏の二男堤たか雄氏(セゾン現代美術館代表理事)に花束が贈呈された。
高良留美子氏は、すでに2011年度先達詩人として顕彰を受けているが、この日の挨拶で、日本現代詩人会に入会した頃のエピソードと、この会をとても大事にしていることを語った。
◇総会承認事項(各理事報告)
各担当理事が、会員に送付していた総会資料を基に要旨を報告した。
・会務一般について(北畑理事長)
・会報発行(柏木理事)
・H氏賞、現代詩人賞(斎藤理事)
・2014冊子(金井副理事長)
・詩祭2014(山本理事)
・東日本ゼミナール(岡島理事)
・西日本ゼミナール(北川理事)
・国際交流(鈴木理事)
・入会審議(麻生理事)
・後援賛助(新延理事)
・ホームページ運営(瀬崎・鈴木理事)
◇会計関係
根本担当理事が、2013年度(2013年7月~2014年6月)の会計決算を読み上げて報告。会計監査を担当した鈴木正樹、中本道代氏が、会計が正当に執行されたことを確認した旨を報告した。
◇議案
・事業計画
2014年度の事業計画案を北畑理事長が報告。これに伴う2014年度収支予算案が根本理事より説明され、承認された。
・名誉会員の件
財部会長が高良留美子氏と辻井喬氏の推挙を提案。承認された。なお、辻井氏は理事会で推挙決定後に逝去されたが、ご自身の受諾を確認しているため総会推挙となった。
この日出席した辻井氏の二男堤たか雄氏は、「名誉会員推挙の知らせを受けた時、父はとても喜んでいた」ことを語った。
・会費納入とそれに伴う議案
宮崎理事が会費納入状況を説明。今回は残念ながら3年以上未納者一名がいるため、「3年以上の督促にもかかわらず会費納入しない場合は総会の承認を経て退会とみなす」という会費・入会金納入細則第5条を適用することを提案、了承された。
◇報告事項
・会員の入退会
名簿担当の渡辺理事が入会63名、休会2名、希望退会23名、物故会員21名、会員総数1067名で昨年同期比21名増と報告。
・会員からの便り
欠席会員の消息を中心に、会員から送られた葉書の内容を葵生川理事が披露した。自らの病気や家族の介護などで外出が難しいという声が多かったこと、従って、会報を隅々まで読んで、各地の詩人団体の動きや会員の詩集発行の情報を得ていることなどが伝えられた。会報への関心が高いことが改めて裏付けられた。
金井副理事長の閉会の辞により総会は終了した。
この後、会場を移して会員の花潜幸氏と鈴木有美子さんの司会で懇親会が、開かれた。菊田守氏の発声で乾杯。新入会員の戸台耕二氏、高崎市から出席した田口三舩氏らが挨拶。約2時間、和やかな懇親と交流、議論と談笑の輪がいくつも生まれた。
(文責・柏木勇一)
以倉絋平氏講演「平家物語―鎮魂の構造」沙羅の木陰の奇蹟
以倉紘平氏の講演「平家物語―鎮魂の構造」は、平家物語を単なる軍記物としてではなく、その重層的多面的側面を、仏教との関わりについて、資料を示して熱く語られた。要旨は次の通り。
平家物語は文学史のジャンルとしては軍記物に属し、表層は男性原理で動いているが、物語の深層には、女性原理が働いている。一例として
平清盛の娘で安徳天皇の母であった建礼門院をあげたい。壇の浦の戦いで安徳天皇は入水、平家一門は滅亡したが、建礼門院は京に送られて出家。生涯を祈りに捧げた。いくさで亡くなった男たちの後世を祈ることは、当時の女性の役割であった。ここにも女性原理が働いている。
平家物語は、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を現す」で始まっている。この冒頭は単なる観念的な世界観の提示としてではなく、仏教説話の具体的なイメージを想起しつつ読まなければいけない。(ここで以倉氏はかすかで甘美な鐘の音が響くという無常堂の図を示す)諸行無常は、この世を貫く厳しい父性原理の提示であるが、無常偈(無常の教えを4行詩にしたもの)の4句目、甘美な〈寂滅為楽〉の世界と響きあっていて、深層に女性原理が働いている。同じく冒頭の〈盛者必衰の理〉も、厳しい父性原理であるが、沙羅双樹の物語は女性原理である。
沙羅の物語を掘り下げたい。
ブッダは、紀元前463年、ネパール・ルンビニ園の沙羅樹の下で、誕生した。(最近の調査でこのことは明らかになっている)。しかし母親のマーヤは、ブッダを産んで7日後に亡くなられた。ブッダは心にそういう欠損を抱えたひとであった。物心ついた頃から、ブッダにとって沙羅の木陰は、特別の空間であった。母なるものを感じる空間であったと思われる。80歳になって、故郷に帰る最後の旅をされたブッダは、旅の途中、様々な木陰で休息をとられた。お気に入りは、マンゴー樹であったけれども終焉を迎える木陰は、クシナーラという土地の沙羅の木陰であった。仏典『ブッダ最後の旅』によると、沙羅の白い花は、涅槃を迎えるブッダの上に〈降りかかり、降り注ぎ、散り注いだ〉とある。ブッダの涅槃は、母なるものに包まれたのである。平家物語は、平家も源氏も、沙羅に包まれて亡くなったことを物語るレクイエムであると思う。
「特定秘密保護法案」声明をめぐり議論
日本現代詩人会は2013年11月24日の臨時理事会で「特定秘密保護法案」成立に反対する声明を「日本現代詩人会声明」として出し、1月24日発行の会報133号で声明文を掲載した。
これに対して今回の総会で「声明には違和感があった。会員アンケートを取って会員の声を聞いてほしかった」という意見があり、重要な問題提起として、議題審議が一段落した後改めて質疑応答の形で議論した。
最初の質問に対して北畑理事長は「法案上程が直前に迫り、会員のアンケートを取る時間的余裕がなかったので理事会声明を出した」と答弁した。これについて、「理事会が現代詩人会の名において声明を出したのではないか」という確認を求める指摘があり、理事長も是認した。
声明に批判的な意見は「日本現代詩人会という組織に、政治と宗教の問題を持ち込まない方がいい。声明は出さない方が良かった」「そもそもこの法案に反対する姿勢に驚いた」「この法律で、表現の自由が侵されるとは思わない」「時間がなかったというが、理事会の合意が即会員の合意ではない」「理事会が会員の総意として出したことは遺憾」などが主な内容。
声明を支持する立場から、「危機的状態にあるのに、声明に反対する会員に危機感がない」「詩を書く社会が脅かされている。この曲がり角に直面し、詩人がどういう動きをするかを示すことは重要。他の文学団体も声明を出している」などの意見が出た。
「このように意見が対立しているのに、安直に声明を出したことに問題があったのではないか」という指摘もあり、最後は財部会長が拙速だったことを認めた上で「表現者に対して厳しくなる時代が予想されたので、法案上程前に反対しておくべきだと判断し声明を出した」と答えた。
議長からも、「総会でこのような議論が交わされたことに意義があった」と、まとめ、この問題の応答を終えた。