研究活動・親睦

東・西日本ゼミ、新年会

2015年度 通常総会を開催

2015年度 通常総会を開催

 日本現代詩人会の2015年度通常総会が8月22日(土)午後1時30分から、早稲田奉仕園スコットホールで開催された。会員の出席は68名。北畑光男理事長が、委任状を含め485人で、会員数1066人(6月30日現在)の3分の1を超え、会則28条により総会は成立したことを報告。総合司会は岡島弘子、葵生川玲理事。議長団は望月苑己氏と岡野絵里子さんが選出された。冒頭、北畑理事長によって前年度総会以降、今年7月までに逝去された20名の会員の名前が読み上げられ、財部鳥子会長の「黙祷」の発声により物故者に黙祷を捧げた。
 
 総会は北畑理事長の開会の言葉のあと、財部鳥子会長が挨拶。詩集賞、詩祭、東西のゼミナールなど、日本現代詩人会の様々なイベントが滞りなく実施され、会の発展と運営を支えてくれた会員に感謝の言葉を述べた。
 
 議事に先立って、菊田守氏が「詩を書くということ」と題して、自作詩の資料を会場に配って講演(詳細は後述)。理事長、会長を歴任した菊田氏については山田隆昭理事が紹介した。
 
 さらに、2014年度第4回理事会(14年11月20日)で名誉会員に推挙された平林敏彦、藤富保男、平澤照雄3氏についても満場一致で承認された。また、2015年度から任期2年間の新理事も登壇し自己紹介した。
 
 議事は、会員に送られた総会次第にのっとり、それぞれの担当理事が報告して進められた。この中では、ホームページ刷新について、とくに投稿欄を設けるという企画案に対して複数の会員から賛否の意見が出て、活発な議論が展開された。このため議題のすべてが終了するまで予定の時間をオーバー。懇親会も遅れて開催されたが、ここでは和やかに交流の場が広がり、最後は威勢の良い歌も出て盛況のうちに総会日程を終えた。
 
(報告・柏木勇一)
 

 

2014年度総会開く

会員数1067人(前期比21人増)

新名誉会員に高良留美子氏・辻井喬氏

 日本現代詩人会の2014年度通常総会が8月23日(土)午後1時30分から、東京・西早稲田の早稲田奉仕園で開催された。会員の出席は64名、有効委任状439名、計503名で、会員数(6月30日現在)1067名の3分の1を超え、会則第28条により総会は成立した。

 会場受付は会員の沢村俊輔氏と小野ちとせさん。総会の司会は、山田隆昭、杉本真維子理事。北畑光男理事長が開会の言葉を述べ、財部鳥子会長が「詩人会は何のためにあるのか。詩人会が発展するだけでは意味がない」と問いかけ「宇宙的視野に立って良い詩を書いていきたい」と挨拶。2014年度事業計画などが承認された。議事に先立ち、以倉紘平氏による「平家物語―鎮魂の構造」の講演があった。

 議長団に森野満之氏と山本聖子氏が選出された後、昨年度総会以降今年6月末までに逝去された21名の物故会員の名前が北畑理事長によって読み上げられ、黙祷を捧げた。

 なお、2013年度第4回理事会(13年10月17日)で名誉会員に推挙された高良留美子氏、辻井喬氏(推挙後の11月25日逝去)についても、満場一致で承認された。財部会長から、高良留美子氏に推挙状と記念品が、故辻井喬氏の二男堤たか雄氏(セゾン現代美術館代表理事)に花束が贈呈された。

 高良留美子氏は、すでに2011年度先達詩人として顕彰を受けているが、この日の挨拶で、日本現代詩人会に入会した頃のエピソードと、この会をとても大事にしていることを語った。

 

◇総会承認事項(各理事報告)

 各担当理事が、会員に送付していた総会資料を基に要旨を報告した。

・会務一般について(北畑理事長)

・会報発行(柏木理事)

・H氏賞、現代詩人賞(斎藤理事)

・2014冊子(金井副理事長)

・詩祭2014(山本理事)

・東日本ゼミナール(岡島理事)

・西日本ゼミナール(北川理事)

・国際交流(鈴木理事)

・入会審議(麻生理事)

・後援賛助(新延理事)

・ホームページ運営(瀬崎・鈴木理事)

 

◇会計関係

 根本担当理事が、2013年度(2013年7月~2014年6月)の会計決算を読み上げて報告。会計監査を担当した鈴木正樹、中本道代氏が、会計が正当に執行されたことを確認した旨を報告した。

 

◇議案

・事業計画

 2014年度の事業計画案を北畑理事長が報告。これに伴う2014年度収支予算案が根本理事より説明され、承認された。

・名誉会員の件

 財部会長が高良留美子氏と辻井喬氏の推挙を提案。承認された。なお、辻井氏は理事会で推挙決定後に逝去されたが、ご自身の受諾を確認しているため総会推挙となった。

 この日出席した辻井氏の二男堤たか雄氏は、「名誉会員推挙の知らせを受けた時、父はとても喜んでいた」ことを語った。

・会費納入とそれに伴う議案

 宮崎理事が会費納入状況を説明。今回は残念ながら3年以上未納者一名がいるため、「3年以上の督促にもかかわらず会費納入しない場合は総会の承認を経て退会とみなす」という会費・入会金納入細則第5条を適用することを提案、了承された。

 

◇報告事項

・会員の入退会

 名簿担当の渡辺理事が入会63名、休会2名、希望退会23名、物故会員21名、会員総数1067名で昨年同期比21名増と報告。

・会員からの便り

 欠席会員の消息を中心に、会員から送られた葉書の内容を葵生川理事が披露した。自らの病気や家族の介護などで外出が難しいという声が多かったこと、従って、会報を隅々まで読んで、各地の詩人団体の動きや会員の詩集発行の情報を得ていることなどが伝えられた。会報への関心が高いことが改めて裏付けられた。

 金井副理事長の閉会の辞により総会は終了した。

 この後、会場を移して会員の花潜幸氏と鈴木有美子さんの司会で懇親会が、開かれた。菊田守氏の発声で乾杯。新入会員の戸台耕二氏、高崎市から出席した田口三舩氏らが挨拶。約2時間、和やかな懇親と交流、議論と談笑の輪がいくつも生まれた。

(文責・柏木勇一)

 

以倉絋平氏講演「平家物語―鎮魂の構造」沙羅の木陰の奇蹟

 以倉紘平氏の講演「平家物語―鎮魂の構造」は、平家物語を単なる軍記物としてではなく、その重層的多面的側面を、仏教との関わりについて、資料を示して熱く語られた。要旨は次の通り。

 平家物語は文学史のジャンルとしては軍記物に属し、表層は男性原理で動いているが、物語の深層には、女性原理が働いている。一例として

平清盛の娘で安徳天皇の母であった建礼門院をあげたい。壇の浦の戦いで安徳天皇は入水、平家一門は滅亡したが、建礼門院は京に送られて出家。生涯を祈りに捧げた。いくさで亡くなった男たちの後世を祈ることは、当時の女性の役割であった。ここにも女性原理が働いている。

 平家物語は、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を現す」で始まっている。この冒頭は単なる観念的な世界観の提示としてではなく、仏教説話の具体的なイメージを想起しつつ読まなければいけない。(ここで以倉氏はかすかで甘美な鐘の音が響くという無常堂の図を示す)諸行無常は、この世を貫く厳しい父性原理の提示であるが、無常偈(無常の教えを4行詩にしたもの)の4句目、甘美な〈寂滅為楽〉の世界と響きあっていて、深層に女性原理が働いている。同じく冒頭の〈盛者必衰の理〉も、厳しい父性原理であるが、沙羅双樹の物語は女性原理である。

 沙羅の物語を掘り下げたい。

 ブッダは、紀元前463年、ネパール・ルンビニ園の沙羅樹の下で、誕生した。(最近の調査でこのことは明らかになっている)。しかし母親のマーヤは、ブッダを産んで7日後に亡くなられた。ブッダは心にそういう欠損を抱えたひとであった。物心ついた頃から、ブッダにとって沙羅の木陰は、特別の空間であった。母なるものを感じる空間であったと思われる。80歳になって、故郷に帰る最後の旅をされたブッダは、旅の途中、様々な木陰で休息をとられた。お気に入りは、マンゴー樹であったけれども終焉を迎える木陰は、クシナーラという土地の沙羅の木陰であった。仏典『ブッダ最後の旅』によると、沙羅の白い花は、涅槃を迎えるブッダの上に〈降りかかり、降り注ぎ、散り注いだ〉とある。ブッダの涅槃は、母なるものに包まれたのである。平家物語は、平家も源氏も、沙羅に包まれて亡くなったことを物語るレクイエムであると思う。

 

「特定秘密保護法案」声明をめぐり議論

 日本現代詩人会は2013年11月24日の臨時理事会で「特定秘密保護法案」成立に反対する声明を「日本現代詩人会声明」として出し、1月24日発行の会報133号で声明文を掲載した。

 これに対して今回の総会で「声明には違和感があった。会員アンケートを取って会員の声を聞いてほしかった」という意見があり、重要な問題提起として、議題審議が一段落した後改めて質疑応答の形で議論した。

 最初の質問に対して北畑理事長は「法案上程が直前に迫り、会員のアンケートを取る時間的余裕がなかったので理事会声明を出した」と答弁した。これについて、「理事会が現代詩人会の名において声明を出したのではないか」という確認を求める指摘があり、理事長も是認した。

 声明に批判的な意見は「日本現代詩人会という組織に、政治と宗教の問題を持ち込まない方がいい。声明は出さない方が良かった」「そもそもこの法案に反対する姿勢に驚いた」「この法律で、表現の自由が侵されるとは思わない」「時間がなかったというが、理事会の合意が即会員の合意ではない」「理事会が会員の総意として出したことは遺憾」などが主な内容。

 声明を支持する立場から、「危機的状態にあるのに、声明に反対する会員に危機感がない」「詩を書く社会が脅かされている。この曲がり角に直面し、詩人がどういう動きをするかを示すことは重要。他の文学団体も声明を出している」などの意見が出た。

 「このように意見が対立しているのに、安直に声明を出したことに問題があったのではないか」という指摘もあり、最後は財部会長が拙速だったことを認めた上で「表現者に対して厳しくなる時代が予想されたので、法案上程前に反対しておくべきだと判断し声明を出した」と答えた。

 議長からも、「総会でこのような議論が交わされたことに意義があった」と、まとめ、この問題の応答を終えた。

 

ページトップへ戻る