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西日本ゼミナールin沖縄2016

「現在、沖縄で文学すること」平敷武蕉氏、八重洋一郎氏講演

 

 日本現代詩人会西日本ゼミナールin沖縄(日本現代詩人会、沖縄実行委員会主催)は二月二十日、「現在、沖縄で文学するということ」をテーマに、ロワジールホテル那覇で開かれた。参加者は百六十人余。以倉絋平日本現代詩人会会長、宮城隆尋沖縄実行委員長があいさつし、平敷武蕉氏(俳人、文芸評論家)と八重洋一郎氏(詩人)が講演した。
 平敷氏は沖縄現代詩の現状について「『基地と戦争ばかり描いている』との指摘があるが、意外と基地や戦争を題材とした作品は少なく、特に若手にその傾向が強い」と指摘。「その中で琉球語や民謡、古謡を詩に導入することで詩のリズムとイメージ、言葉の広がりを取り戻そうとしている詩人がいる」と強調した。「日本の現代文学で社会派が衰えて久しい中、豊かな可能性を見せているのが沖縄の詩だ。矛盾に目を据えて表現を営むことは、人間はいかに生きるかという叫びだ」と述べた。一方で「思想や批評性に比して詩の技法や修辞が軽視されてきた」などの指摘があることも紹介した。
 八重氏は地球温暖化問題、核兵器に囲まれている現状などを挙げて「戦争は必ずエスカレートし、世界戦争に拡大する。現代は人類の滅亡を常に感じさせる」と述べた。「詩はいかに対応するか。歴史、自然へのやわらかい感受性、他者への想像力、存在への深い共感が必要だ」と指摘。詩「詩表現自戒十戒」などを朗読し「全感覚、全言語能力を挙げて詩を書き、問題の多様さと深刻さによって明晰な発狂状態にいたることだ」と結論づけた。
 朗読には三十代から七十代の詩人が登壇。独自の風土を醸す島々の言葉を交えた。作品は高良勉氏が「老樹騒乱」、トーマ・ヒロコ氏が「パスタを巻く」「わたしたちの10年」、伊良波盛男氏が「何もない島の話」、中里友豪氏が「カラス」。幕間に沖縄工業高専の学生たちがエイサーを演舞した。日本現代詩人会理事の北川朱実氏が閉会のことばを述べた。
 交流懇親会は新延理事長のあいさつに続き、田村雅之副理事長が乾杯の音頭を取った。第十五代琉球王府おもろ伝承者の安仁屋眞昭氏らによるおもろ詠唱があり、県立芸術大学の高嶺久枝教授や学生たちによる琉球芸能が披露された。終了後は慰労会も催された。
 沖縄実行委員会は事前に沖縄の五十人余が参加したアンソロジー「潮境」を発行。詩人たちの交流会を催し、記者会見や地元紙への寄稿で来場を呼び掛けた。(報告者・宮城隆尋)

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