研究活動・親睦

詩祭

日本の詩祭2023開催

6月4日・アルカディア市ヶ谷 H氏賞 現代詩人賞贈呈・先達詩人顕彰

 六月四日(日)「日本の詩祭2023」が、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で開催された。佐川亜紀理事長による開会の挨拶の後、第Ⅰ部はH詩賞・現代詩人賞贈呈式と先達詩人顕彰、第Ⅱ部は歌人の小池光氏による講演、松岡けいこ氏、藤原和矢氏によるシャンソンのコンサートが行われた。(記録 長田典子・写真 石川厚志)

第Ⅰ部(贈呈式・先達詩人の顕彰)
 司会の杉本真維子氏による会の概要を説明の後、八木幹夫会長は快晴となり喜ばしく思う、今年は懇親会もあるので存分に楽しんでいただきたいと挨拶で述べた。佐川亜紀理事長はH氏賞の小野絵里華氏、現代詩人賞の河津聖恵氏、先達詩人に顕彰された郷原宏氏を紹介し、各基金への御礼を述べ開会の挨拶とした。

八木幹夫会長

田村雅之実行委員長

佐川亜紀理事長

司会の沢村俊輔氏 杉本真維子氏

◇第七三回H氏賞贈呈式


会長からH氏賞を贈られる 小野絵里華氏


H氏賞選考委員長 広瀬大志氏

大崎清夏氏

 選考委員長の広瀬大志氏により今回の選考過程について報告された。選考委員全員で候補者のキャリア、年齢、詩の書き方などは一切省いて選考をすることで合意した。意見が分かれたが、詩はどうあるべきかに立ち戻って選考し最終的に小野絵里華氏『エリカについて』が選ばれた。フットワークが軽くリズミカルで言葉選びのセンスのよさに加え、理性的でテクニカルに構築されており社会に生きることを問う詩集だった。未来の詩の可能性を感じる詩集であったと述べた。
 次に八木幹夫会長より著者小野絵里華氏に賞状と目録が授与された。
 受賞詩集について大崎清夏氏は、この詩集について語ることはとりもなおさず絵里華について語ることだと述べた。カタカナのエリカとはどこにいる誰のことなのかを考えることから始めなければならない。詩集のタイトルを翻訳すると「これは小野絵里華ではない」と言えるのではないか。名前は一人の人間を何も十全に表すことはできない。どうしてこんなに名と名指されたものが隔たった世界でわたしたちは生きることができるのかということがこの詩集の主題だ。この主題に正面から突っ込んでいくことで辛うじて自分の足で立っているのが小野絵里華氏の凄さだと述べた。
 小野絵里華氏は、受賞の言葉で、H氏賞をいただけて嬉しい、今から十二年前、詩を書くのが何よりも楽しく言葉が上からも下からも降ってきていた。その後十年ほど詩を書けなくなっていたが、また書けると信じていた。世界に居場所がないと感じ自分に自信をもつことが苦手で、びくびくしながら生きていたことなどを述べ、この受賞は雑誌『ユリイカ』投稿欄の選者だった伊藤比呂美氏のおかげだと結んだ。
 その後花束贈呈が行われた。

◇第四一回現代詩人賞贈呈式


現代詩人賞を贈られる 河津聖恵氏

現代詩人賞選考委員長 朝倉宏哉氏

水島英己氏

 選考委員長の朝倉宏哉氏より選考過程について説明がされた。選考委員会では、中堅以上の詩人、質が高く個性的な詩集を対象に選考し、最後の投票で河津聖恵詩集『綵歌』に決まった。『綵歌』は、詩人が全身全霊で対象に迫り新鮮かつ深淵な世界が構築されている。言葉の力による独自の世界となっており現代詩の可能性を示唆していると述べた。

 次に八木幹夫会長より著者河津聖恵氏へ賞状と目録が送られた。
 受賞詩集について水島英己氏が話をした。受賞詩集『綵歌』は、若冲へのオマージュの詩集。絵を言葉で説明するのではなく、自らを惹きつけてやまない感動、謎めいたもの、無意識の痛みや震えが詩作と繋がり、若冲の絵を二一世紀の現代詩の場へと引き込んでいった。若冲の絵と向き合うことで著者は自らの言語を鍛え新しくすることに成功している。古典から現在の言葉を取り戻すことを詩集『綵歌』は提起していると述べた。
 次に河津聖恵氏が受賞の言葉を述べた。二〇一六年より若冲の詩を書き始めた。様々な資料にあたり縁ある地を訪れては絵師の姿を想像したことで、自分のなかで若冲像が立ち上がり詩のなかで動き始めた。若冲の絵によって蘇生しようとする自分自身の命のありようが炙り出された。蘇生への渇望は自分の詩の原動力。詩には過去や死者を蘇させる力がある。今回の受賞を励みにさらに新たな境地に向かっていきたいと述べた。
 その後、花束贈呈と祝電を披露された。

◇先達詩人の顕彰

先達詩人の顕彰を受ける 郷原 宏氏

 先達詩人に顕彰された郷原宏氏は一九七四年詩集『カナンまで』で第二四回H氏賞受賞、一九八三年高村智恵子論『詩人の妻』で第五回サントリー学芸賞受賞、二〇〇六年『松本清張事典決定版』で第五九回日本推理作家協会賞評論部門を受賞している。
 八木幹夫会長により顕彰状と目録贈呈がされた。
 郷原宏氏は、石原吉郎のエピソードを紹介するとともに、若い頃から石原吉郎の弟子を名乗ってきたとのこと。一九七〇年代月刊誌「詩学」で同人詩誌月評をしていた頃に荒川洋治氏の詩に出会ったこと、荒川氏の詩に衝撃を受け、詩の実作から遠ざかったことなど話した。その後は文芸批評や散文を書いてきた。今後も詩から一歩外れたところで今まで通りやって行こうと思っているとユーモアたっぷりに述べた。
 その後花束贈呈があった。
 そしてH氏賞受賞者小野絵里華氏、現代詩人賞受賞者の河津聖恵氏による詩の朗読が行われた。

第Ⅱ部 講演『斎藤茂吉について』・シャンソンとピアノ

講演する 小池 光氏

 歌人の小池光氏によって「斎藤茂吉」についての講演がされた。小池氏は一九七九年『バルサの翼』で現代歌人協会賞、一九九五年『草の庭』で第一回寺山修司短歌賞など多くの賞を受賞。二〇二二年『サーベルと燕』は現代短歌大賞、第三八回詩歌文学館賞を受賞している。講演は『斎藤茂吉について』。斎藤茂吉は山形生まれ。斎藤茂吉の才能を感じた親戚が東京の学校に出した。短歌は短歌以前に歌人の背景を読むことが重要。特に茂吉は年齢とセットで読むと面白い。晩年の斎藤茂吉の作品を楽しく解説した。
 次に藤原和矢氏伴奏、松岡けいこ氏の歌うシャンソンコンサートが行われた。ピアフの「薔薇色の人生」「さくらんぼみのる頃」など情感豊かに歌い「日本の詩祭2023」を華やかにしめくくった。

シャンソンを歌う 松岡けいこ氏

ピアノ演奏 藤原知矢氏

懇親会(記録 鈴木正樹)

日本詩人クラブ会長 北岡淳子氏

秋 亜綺羅理事


司会 鹿又夏実氏・宮田直哉氏

 17時30分から、詩祭会場の隣、富士東の間で懇親会が開かれた。佐川亜紀理事長による司会の宮田直哉氏、鹿又夏実氏の紹介で会が始まる。田村雅之実行委員長からコロナ禍もようやく山を越え、久しぶりの会で、参加者が多いことなどに触れた挨拶。八木幹夫会長は忌憚なく、懇親会を楽しみましょうと挨拶。来賓として日本詩人クラブ会長の北岡淳子氏から「日本の詩祭2023」日程の隅々への賛辞と各受賞者への祝いの言葉。日本詩人クラブの企画で原稿を募集していることの紹介。続いて授賞式。秋亜綺羅理事からHP投稿欄新人賞・新人の入選者の紹介。選考委員長の山田隆昭氏から選考経過と結果発表。新人賞には他者との記憶に違和感を呼び起こされるような作風の岩佐聡氏。新人受賞者は心理の皮を剥いでいくような作風の河上類氏、積み重ねた年輪を感じさせる守屋秋冬氏、日常の隙間から作品をつくる竹井紫乙氏。受賞はしなかったが、自分の殻を破ろうとする南ひさ子氏など今年も秀作を期待したい詩人がおおいことにも触れた。新人賞の賞状を山田隆昭氏から岩佐聡氏、新人の賞状は草間小鳥子氏から河上類氏、塚本敏雄氏から竹井紫乙氏、山田隆昭氏から守屋秋冬氏へ授与された。秋亜綺羅理事から今年の選考委員、北原千代氏、根本正午氏、渡辺めぐみ氏の発表。瀬崎祐氏は小池光氏講演に触れながら、自分と短歌の関わりを語った後、乾杯の音頭をとった。その後、歓談となる。受賞者四名は自作詩の朗読。歓談の後半に、遠隔地会員のスピーチ。福岡から龍秀美氏、新潟から椿美砂子氏、仙台から佐々木貴子氏、長岡から植木信子氏。新入会員の紹介。池田高明氏、福田恒昭氏、宮永蕗氏、竹井紫乙氏、守屋秋冬氏、松井ひろか氏。しばらく歓談だけの時間をおき。閉会の言葉を杉本真維子担当理事。田村雅之担当理事が会終了後の連絡。午後8時に終了。しかし、コロナでながらく中断していた懇親会、なかなか切り上げられない会員も多かった。
 その後、同じ会場の一角にコーナーを作り、実行委員と受賞者の河津聖恵氏や井川博年氏を交え、慰労を兼ねた2次会を午後9時まで続けた。

新人賞を贈られる 岩佐聡氏

草間小鳥子氏と河上類氏

塚本敏雄氏と竹井紫乙氏

山田隆昭氏と守屋秋冬氏

瀬崎祐氏

龍秀美氏

椿美砂子氏

佐々木貴子氏

植木信子氏

杉本真維子氏

◇「日本の詩祭2023」出席者 
【詩祭・会員出席者】
相沢正一郎 相原京子(会員受付) 青木由弥子(講演者受賞者案内) 秋亜綺羅(懇親会司会) 秋本カズ子(受付会計) 秋山公哉 朝倉宏哉 朝葉晴瑠砂(進行) 阿蘇豊 麻生直子 阿部敏夫 天野英 池田高明  石川厚志(写真撮影) 李承淳 磯崎寛也 伊藤悠子 今鹿仙 植木信子 大掛史子 岡島弘子(実行委員) 岡本勝人(一般受付)尾崎義久 長田典子(記録) 尾世川正明 小野ちとせ(名札) 小山田弘子 柏木勇一 鹿又夏実(懇親会司会) 北畑光男(会場整理・進行) 草間小鳥子(名札) 熊澤加代子 郷原宏 斎藤菜穂子(講演者受賞者案内) 坂田トヨ子 佐川亜紀(控え室接待・会場案内)佐々木貴子 沢聖子(花束・祝電) 沢村俊輔(詩祭司会) 志田道子 篠崎フクシ 白井知子 杉本真維子(実行委員・詩祭司会) 鈴木茂夫 鈴木東海子 鈴木正樹(記録) 清野裕子 関中子 関口隆雄 瀬崎祐 曽我貢誠(会場)田井淑江 高貝弘也 高島清子 高島りみこ(名札) 高橋次夫 滝川ユリア 竹内美智代(花束・祝電) 田中眞由美(現代詩人賞花束贈呈) 田村雅之(実行委員長・総合司会・控え室接待・会場案内) 塚本敏雄(会場整理・進行) 常木みや子 椿美砂子 戸台耕二 中井ひさ子(花束・祝電) 中島悦子 中田紀子(受付) 中村不二夫 南雲和代 夏目ゆき(記録) 新延拳(控室接待・会場案内) 西野りーあ(会員受付) 布川鴇 根本明(受付) 根本正午(音響) 野木ともみ(受付会計) 長谷川忍(来賓受付・案内) 服部剛(会場)浜江順子(進行) 林新次 原詩夏至 原島里枝 原田道子(歌曲歌手係) 春木節子(表彰状準備・先達詩人花束贈呈) 春木文子(一般受付) はんな 広岡守穂 広瀬大志 広瀬弓(会員受付) 福田恒昭 藤井優子 堀内みちこ 松井ひろか 松浦成友(受付会計) 松尾真由美(H氏賞花束贈呈) 水島きょうこ(控え室へ案内) 水島英己 光冨幾耶(音響) 宮内喜美子(控え室へ案内) 峯尾博子 宮崎亨(会場整理・進行) 宮地智子 宮田直哉(懇親会司会) 宮永蕗 八木幹夫(控室接待・会場案内) 薮下明博 山田隆昭 山本聖子 結城文 雪柳あうこ(一般受付) 龍秀美 渡辺めぐみ(受付) 
(112名)

【来賓】小野絵里華 河津聖恵 小池光 松岡けいこ 藤原和矢 平澤照雄(平澤貞二郎記念基金)豊幸枝(協栄産業)北岡淳子(一社 日本詩人クラブ会長)大崎清夏 山岡喜美子(ふらんす堂) 東辻浩太郎(左右社)長谷川恭平(文學界編集部)岩佐聡(HP投稿欄新人賞)、河上類 竹井紫乙 守屋秋冬(以上3名はHP投稿欄新人)小野明夫 小野菜千味 井川博年 石川朋子 岩田好伯 葛西征子 小柳学 佐々木連 さとうのりお 中村真之 松坂佳生 山岡有以子 山口修
(29名)
【報道】真崎隆之(読売新聞社)竹中文(産経新聞社)(2名)
【一般】36名
会員参加者 112名
来賓    29名
報道    2名
一般    36名
出席者総数 179名

谷口典子氏よりお祝い金(2万)拝受

【懇親会出席者】(101名)
相原京子 青木由弥子 秋亜綺羅 秋山公哉 朝倉宏哉 麻生直子 李承淳 井川博年 池田高明 石川厚志 石川朋子 石毛拓郎 磯崎寛也 伊藤悠子 岩佐聡 植木信子 岡島弘子 岡本勝人 尾崎義久 尾世川正明 小野明夫 小野絵里華 小野ちとせ 小野菜千味 鹿又夏実 河上類 河津聖恵 北畑光男 北島理恵子 草間小鳥子 郷原宏 小柳学 斎藤菜穂子 佐川亜紀 佐々木貴子 佐々木漣 さとうのりお 佐藤真理子 沢聖子 沢村俊輔 白井知子 杉本真維子 鈴木茂夫 鈴木東海子 鈴木正樹 清野裕子 瀬崎祐 曽我貢誠 田井淑江 高貝弘也 高島清子 高島りみこ 滝川ユリア 高波忠斗 竹内美智代 田中眞由美 田村雅之 塚本敏雄 椿美砂子 中井ひさ子 中島悦子 中田紀子 中村真之 新延拳 西野りーあ 根本明 根本正午 野木ともみ 長谷川忍 服部剛 浜江順子 原詩夏至 原島里枝 原田道子 春木節子 春木文子 平井達也 広瀬大志 広瀬弓 福田恒昭 藤井優子 星乃ロマン 堀郁子 松井ひろか 松浦成友 松尾真由美 水島英己 光冨幾耶 峯尾博子 宮崎亨 宮田直哉 宮地智子 宮永蕗 八木幹夫 山岡喜美子 山岡有以子 山田隆昭 結城文 龍秀美 渡辺一郎 渡辺めぐみ(集計 中田紀子・佐川亜紀)

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