研究活動・親睦

各地の声・各地のイベント

各地のイベントから(会報170号)

各地のイベントから

兵庫県現代詩協会
第12回ポエム&アート展特別講演会
「詩を書くということ 第4回
   安水稔和さんの詩に沿って」
             山本眞弓

講師 時里二郎氏


 一月十四日神戸文学館で時里二郎氏の講演会を開催。今回は昨年逝去された神戸の詩人安水稔和の詩を取り上げ五十年代から現在までの詩歴を繙いた。
 初めに『存在のための歌』~『鳥』まで
 見ていると見られているものは/すばやく私
 に近づいてきた。/(見ることは共にあることだと。)/それらは私のなかにはいってきた、/私はそれらのなかへはいっていったのだが/いつしか私はその向こうに出てしまっていた。
   (「一九五四年五月の歌」)
見るとは見られるものが見るものにとり存在しないと同様になることだ という。ここにはエリオットやフランス詩人の影響をみることができる。
 あれが鳥だ。/大空に縛られた存在。/動く
 ことを強いられた/技術者/世界の外から/悪
 意の手によって投げこまれた/礫だ。(「鳥」)
この比喩の精度・過激さに圧倒される。
作者は「鳥と書くと不思議に言葉の扉
が開いた。鳥は言葉であり、声であり、
歌であった。」と述懐している。
 次に『能登』を経て「西馬音内」へ菅江真澄を追跡するようになって詩風が変わる。(「西馬音内―菅江真澄追跡行」)
 歪んだ障子/おもいきって/押し開き/押し
 入って辿りついた/薄い冷たい座布団。/や
 っと座りこむ/(中略)/まえを見やれば/
 戸の隙間から/目くるめく外/鮮やかに。
目に入ったものそのままを書く。菅江真澄の眼差しで映し出す。それは戦後詩の流れに対する懐疑から生まれた。詩は、言葉で言い表せない世界を言葉で表そうとすることの断念から始まる。その深淵になにがあるかわからないが、ただ言葉を落としてみる。その試みが詩になる。
 そして阪神淡路大震災に会う。『生き
ているということ」をすぐに発表。
 炎炎炎炎炎炎炎/また炎さらに炎/あれから
 わたしたちは/なにをして/きたのか。/信じ
 たものはなにか。/なにをわたしたちはつく
 りだそうとしてきたのか。
       (「五十年目の戦争」
作者は「書くしかないと思い、書いて少元気になり、書くことが生きていく支えになると実感した。」と述べている。
 「詩を書くということ」は正に「生きていく支えになり、力になる」ことの自己確認であり喜びなのだと、講演を結んだ。


ポエム・イン・静岡 ご報告
 静岡県詩人会 詩祭理事 井村たづ子

講演する 佐相憲一氏


 1月22日静岡市内のあざれあにて恒例のポエム・イン・静岡が行われた。やや、肌寒い日ではあったが、満席のお客様を迎えての佐相憲一氏の講演(詩という事件)は、ご自身の朗読を交えながら、終始弱き者の目線に立つ手法は見事なものであり、会場からは時々すすり泣きも聞こえてきた。
 (詩という事件)という事件とは何
か。氏はこう語る。
(殺伐とした世の中、生きることの困
難さ、ひび割れる関係性、そんな中でも詩の心が灯され続けていること、それ自体が事件である)。
 氏の講演の朗読詩を繙いていくと最初の朗読詩(うすくれないの帰り道)でまず観衆の耳を釘づけにさせる。
 (人体解剖図みたいな夕暮れのまち)は新型コロナウイルス、しかり、ウクライナへの侵攻もまた、人が人として生きることの困難さが、サスペンスのように襲うと綴り語る。(痛み)を痛みとして詩に変えようとする真摯な前向きさこそ、人類共通の財産となり得ると思う。
 また、私が司会役も忘れて聴きいってしまったのは(住所欄には獄中と書いた)という詩である。
 恐らくはラッキーとは言えない幼少
期を過ごされた氏であるからこそであ
ろうが、(愛が逮捕された)はどんな
人間も獄中に張り付けられる存在でありえるという事実である。
 最後は奥様への愛情深き詩で結ばれ
た。こういう機会を提供させて頂いた現代詩人会の皆様への御援助や御協力に深く深く感謝申しあげる。


徳島現代詩協会 創立35周年記念
「詩を書くみんなの集い」
 山本泰生

会場風景


 これは、2023年1月29日(日)徳島市の文学書道館で開催しました。当初は昨年9月実施で準備したもののコロナ禍で延期、このたびようやく実現したところです。
 講師として清水恵子氏をお招きし、「詩の実作につなげる」をテーマに、3月フォローの会とセットで実施するもの。氏が徳島詩壇やとくしま文学賞の選者でもあることから、新しい層の参加により新鮮な雰囲気で和やかな集いを進めることができました。
 第一部は講師により詩作のヒントを細部にわたり説明を受けることからはじまりました。きめ細かい資料により驚く声もあがり、フランクな質疑や意見も出されたことでした。なかでも、詩が書けないときはどうすればいいかとか。
 第二部は参加者が自作詩朗読と詩作についての取り組みなどを発表することでした。これを鑑賞して、講師の率直なコメントをはじめ一人ずつ検討するようにしました。しかし、白熱するなか時間の制約もあって反省点も残りました。
 今回の集い全体において、改めて会員以外の特に若い方々から大きな刺激を受け、新会員にどうかと盛り上がったほどでした。
 次回フォローの会は3月19日(日)に「同じメンバーで一段と活発な意見交換や学びを深める」ことをバネにして、当会もより若返りさせていきたいと考えております。

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