日本の詩祭 2025開催
日本の詩祭 2025開催
6月1日・アルカディア市ヶ谷
H氏賞 現代詩人賞贈呈・先達詩人顕彰
去る六月一日(日)、アルカディア市ヶ谷にて、日本の詩祭2025が13時より17時まで三階「富士西」の間で厳粛且つ盛大に開催された。
司会は生駒正朗、青木由弥子両氏。塚本敏雄理事長の開会の言葉で式典が開始された。
![]() H氏賞受賞 草間小鳥子氏 |
![]() 現代詩人賞受賞 秋山基夫氏 |
![]() 司会の生駒正朗氏 青木由弥子氏 |
![]() 塚本敏雄理事長 |
![]() 松尾真由美実行委員長 |
![]() 郷原宏会長(右) 草間小鳥子氏(左) |
第Ⅰ部(贈呈式・先達詩人の顕彰)
一.第七五回H氏賞贈呈式
選考委員長根本明氏より、選考経過の報告がされた。
候補詩集は一次選考で一二冊、最終的に三冊に絞り、多数決で草間小鳥子詩集『ハルシネーション』に決定と報告。郷原宏会長より草間小鳥子氏へ賞状と記念品目録が授与された。
受賞詩集については、朝吹亮二氏が左記(要旨)のように述べた。
「冒頭は《ゆび先を傷つけることしかできない~》と始まる。非常に繊細に自分の傷と向きあい、詩に書きつける肌感覚に強く惹かれました。私は説教調の詩が苦手ですが、草間作品には、それがなく、常に自分に正直。大学で教鞭をとる知人の話ですが、イギリス現代作家の未翻訳の作品を学生に翻訳させたところ、見事な訳をした学生がいたので聞くと、AIに翻訳させたと聞き、失望したという。私も正しさには感銘を受けない。日常感じるものを言葉にのせて等身大の声で書く。観念的でなく、自分の身体的な問題として受け止めていく。そういう見事な手つきの草間作品に感銘を受けました。今後も草間さんに注目していきたい。本日はおめでとうございます」と述べた。
次に草間小鳥子氏が受賞の言葉を左記(要旨)のように述べた。
「ハルシネーションは、二〇二二年~二〇二四年の間に書いた作品。この間、世界の様々な事象から距離を置き、身近な感傷のみに焦点をあて詩を書くということはできませんでした。批判は様々ありますが、私は想像力と思考力を研ぎ澄まし、時代の当事者でいたい。野村喜和夫さんが、帯文で「草間小鳥子は誰よりも世界に向き合っている。(以下略)」と記してくれていますが、一篇の詩が世界の構造を振り返ることは、よくも悪くもあることだと思う。詩は無力と感じることは多いが詩は力を持ちすぎても危ない。事実が事実としてとらえられ、歴史となるには時間がかかります。ものごとが固まりきらないあやふやな中で、あらがった愚かな弱者の記録として詩を書いていきたい。」
![]() H氏賞選考委員長 根本 明氏 |
![]() 草間氏を紹介する朝吹亮二氏 |
![]() 現代詩人賞選考委員長 瀬崎 祐氏 |
![]() 秋山氏を紹介する水島英己氏 |
二.第四三回現代詩人賞贈呈式
選考委員委員長の瀬崎祐氏より選考経過の報告が為されました。
候補詩集は一次選考で一二冊、最終的に四冊に絞り、決戦投票で秋山基夫氏の『花下一睡』に決定と報告。郷原宏会長より秋山基夫氏へ賞状と記念品目録が授与された。
受賞詩集については、水島英己氏が左記(要旨)のように述べた。
「古典の引用について、秋山さんは著書もあり、本格的に考えてきた詩人。古典の歌と現在の歌との共同のなかから立ち上がる新たな風景と心、それが秋山さんの詩の根底にあります。本日はおめでとうございました」
次に秋山基夫氏が受賞の言葉を左記(要旨)のように述べた。
「私が当会に入会したのは一九七三年で入会事務は新川和江さんが担当でした。とても大きな会になりました。時間は過去から現在へ流れています。清少納言の「枕草子」、昔は随筆と言われましたが、今はエッセイと呼びます。我が国最初のエッセイストですよ、と清少納言に言ってみたいです。「春はあけぼの~」とあるのは散文詩。詩をそのように考えています。本日は、ありがとうございました。」
三.先達詩人の顕彰
今年度、先達詩人の顕彰となったのは、以倉紘平氏、黒岩隆氏、八木幹夫氏の三名。郷原会長から敬意の言葉と顕彰状、記念品目録が贈呈された。
同三名が以下のとおり挨拶された。
(一)以倉紘平氏の言葉(要旨)
(代理人 宮地智子氏)
「本日、出席かなわない御無礼をお許し下さい。先達詩人として顕彰賜りますことは光栄であり、畏れ多くもあり、身の引き締まる思いです。会長、理事長、理事の皆様に感謝申し上げます。」
(二)黒岩隆氏の言葉(要旨)
「私が詩を書き始めたのは大学二年、一九歳の頃、「詩学」への投稿からです。黒田三郎詩集『ひとりの女に』を何度も読んで詩作しました。私ではない他者に、自分が熱く震える心を伝えるために、私の内なるミューズに詩を捧げました。これが私の詩の原点です。二四歳で上京すると歴程同人に推挙され、そこで憧れの詩人、黒田三郎氏と会えた感激が今も、忘れられません。」
(三)八木幹夫氏の言葉(要旨)
「先週、青森の恐山に行きました。霊山を巡る中、トイレに行きたくなり、白衣を着た女性に案内してもらいました。その女性は「いたこ」とわかり、ふと一瞬、両親を黄泉から呼びよせ、先達詩人の顕彰を報告して声を聞いてみたいと思いました。本日はありがとうございました」
![]() 宮地智子氏(以倉紘平氏の代理) |
![]() 先達詩人の黒岩 隆氏 |
![]() 先達詩人の八木幹夫氏 |
◆日本の詩祭出席者(敬称略)
(来賓三九名)
草間小鳥子・朝吹亮二・秋山基夫・水島英己・以倉紘平(代理:宮地智子)・黒岩隆・八木幹夫・工藤正廣・佐々木秀実・根本明・瀬崎祐・熊倉ミハイ・三刀月ユキ・むきむきあかちゃん・太田雅孝・秋山公哉・後藤聖子・飯島徹・木津川珠枝・千石英世・高波忠斗・長縄光男・原田義也・中村邦生・今井聖・江口純子・川井直樹・都甲英治郎・辻谷美佳子・岩田好伯・田中眞由美・則武美津子・浜江順子・田村雅之・うるし山千尋・井川博年・伊藤伸恵・小松誠司・小林進
(会員八二名)
相原京子・相沢正一郎・秋元カズ子・新井啓子・生駒正朗・石川厚志・磯崎寛也・岩佐聡・植木信子・上手宰・大久保栄里紗・大塚常樹・尾世川正明・小野ちとせ・小山田弘子・柏木勇一・加藤廣行・金子智・鹿又夏美・川中子義勝・川崎芳枝・北畑光男・恭仁淳子・熊沢加代子・黒崎晴臣・小林登茂子・斎藤菜穂子・佐川亜紀・佐々木貴子・塩野とみ子・篠原フクシ・清水博司・生野毅・白井知子・末野葉・鈴木東海子・鈴木正樹・関口隆雄・曽我貢誠・たいち・田井淑江・鷹森由香・高橋次夫・高橋加代子・高島りみこ・滝川ユリア・田中裕子・田中美千代・椿美砂子・寺田美由紀・中井ひさ子・中田紀子・南雲和代・夏目ゆき・新延拳・西畠良平・布川鴇・根橋麻利・nostalghia・原詩夏至・原田道子・柊月めぐみ・平井達也・福田恒昭・藤井優子・古屋朋・外村京子・堀雅子・眞神博・松井ひろか・松田悦子・三ヶ島千枝・宮崎亨・萌沢呂美・望月苑巳・森うずまき・山本聖子・山中真知子・横尾憲孝・和田まさ子・渡ひろ子
(一般四九名)
Yellow・今井瞳・うるし山麻希・小笠原眞・加藤望・柿沼オヘロ・加藤望・河上類・川下真理子・喜々津節子・きざおぎきゅう・郡宏暢・ケイトウ夏子・五代康成・小松博司・古森もの・斎藤孝治・坂本法子・清水ロカ・篠塚歴山・清水弘之・鈴木侑平・関谷祐貴子・関谷務・関内桂子・武居甲英・田代久美子・恥星スナツ・菜穂子・中谷正人・永井佳奈恵・南田偵一・則武緑・則武言美・則武有美・則武弥・則武マサル・永塚木綿子・林由旗・深川梨里・藤井美和・降籏りの・松田周作・真井康成・三刀月ユキ・宮川拓也・吉成道子・米田亮太・渡辺ナオ
(理事一五名)
郷原宏・塚本敏雄・杉本真維子・山田隆昭・秋亜綺羅・野村喜和夫・青木由弥子・沢村俊輔・中島悦子・根本正午・浜田優・春木節子・広瀬大志・松尾真由美・渡辺めぐみ
以上、総人数一八五名
第Ⅱ部 講演「詩人がロマンを書くとき
『ドクトル・ジヴァゴ』を巡って」 工藤正廣氏
コンサート「ピアフ・武満・トレネの世界」 佐々木秀実氏
講演の講師は工藤正廣氏。演題は「詩人がロマンを書くとき『ドクトル・ジヴァゴ』を巡って」(要旨は別頁)
コンサートは、佐々木秀実氏が、テーマ「ピアフ・武満・トレネの世界」として、華麗にシャンソンの世界へ誘い、最後は会場参加者を合唱へと誘導し、盛況のなか終演した。
![]() 講演する 工藤正廣氏 |
![]() 佐々木秀実氏 |
【懇親会】
17時30分から、詩祭会場の隣「富士東」の間で開催。司会は篠崎フクシ、梁川梨里の両名。郷原宏会長の開会の言葉で始まると、秋亜綺羅理事の進行でホームページ投稿詩の新人賞表彰式が行われた。本日出席の熊倉ミハイ、三刀月ユキ、むきむきあかちゃん、三名に表彰状、記念品の授与がされた。
次に、日本詩人クラブ会長の太田雅孝氏の挨拶、八木幹夫氏の乾杯で歓談が始まった。
宴のなかでスピーチされた方々は、秋山公哉、井川博年、今井聖、佐々木貴子、岩佐聡、椿美砂子、布川鴇、小笠原眞(敬称略)
宴中、新入会員の朗読もあり、入会担当の広瀬理事が、若手の詩は今、ラップもあり、その多様化に目が離せないと、会場に一石を投じた。
最後は杉本真維子副理事長が、ユーモア談と贈呈式の所感を話され、閉会のことばで、出席者一二〇人弱の盛況な宴は閉会した。(文責・沢村俊輔)
![]() 熊倉ミハイ氏 |
![]() 三刀月ユキ氏 |
![]() むきむきあかちゃん氏 |
(写真・石川厚志)