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2025年第9回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表(写真は詩祭懇親会)

2025年第9回HP現代詩投稿欄「新人賞」「新人」発表
 「新人賞」熊倉ミハイ
 「新 人」佐々木春 三刀月ユキ むきむきあかちゃん

 2025年日本現代詩人会第9回HP詩投稿欄新人賞及び新人の選考会は、東京駅に直結している「八重洲倶楽部」第9会議室にて、2025年3月14日(金)午後3時から5時まで、塚本敏雄理事長、秋亜綺羅HP担当理事、光冨幾耶HP委員の立ち合いのもとで開催された。選考委員はうるし山千尋氏、雪柳あうこ氏、そして浜江順子の3人。互選により浜江が選考委員長を務めることとなった。投稿作品は、第32期(2024年1~3月)444篇、第33期(4~6月)550篇、第34(7~9月)611篇、第35期(10~12月)676篇と、次第にその数を増やし、総数2281篇と前年よりもかなり増え、選者もその数に圧倒されながらも懸命に舵を切り、なんとか最後まで乗り切った。以下に各受賞者の経歴と言葉を紹介します。(浜江順子)

【新人賞・熊倉ミハイ(くまくら・みはい)】

 この度は、日本現代詩人会投稿欄の、第9回新人賞という身に余る賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。まさか自分が、ととても驚いています。実感はまだ追いつきません。このような賞を頂けたのは、今までの人生で関わった方々、支えてくださった方々のおかげです。そして、選考の先生方と運営の方々に、深く感謝を申し上げます。本当に、ありがとうございます。
 傍にいた少年が、肘で突いて急かしてくる。「待ってて」なんて言葉は届くわけもなく、ああ確かに私は、「誕生日プレゼント」を贈るよりも、「何でもない日プレゼント」をずっとしていたい性分であった(ここにいる誰もが、そうであった)。いくらかは持ってたでしょ、ずる、と私の中の黒い部分を盗み返して、少年は遠慮なしに走り出す。また、彼を追いかける旅に出ます。決まって長旅です。

【新人・佐々木春(ささき・はる)】
 しろくて、にぶくて、ぬるくて、かたくて、ねむたくて、人差し指の先まで広がるリアルな空やビルや駅や隣人や、ぜんぶまとめて、せめて1μでもずらしたり遅らせたりできれば、そんな曖昧な思いで書いてきました。選評からは、毎回大きな励ましをいただきました。選者の皆様、日本現代詩人会の運営の皆様、一年間、本当にありがとうございました。

【新人・三刀月ユキ(みとづき・ゆき)】

 例えば台所で包丁を動かしている時。自転車で懸命にこいでいる時。あっと思うようなことを知った時。真夜中に歯を食いしばっている時。聞こえてくる。声が響き、破裂する。ことばが現れる。そのことばともっと誠実にしっかり向き合えるよう、これからも学びます。本当にありがとうございます。

【新人・むきむきあかちゃん】

 新人に選んでいただけて本当に嬉しいです。感謝の気持ちでいっぱいです。1年間詩を読んでいただけたこと、解釈し評をいただけたことは、初めてのことでとてもワクワクしました。また、去年は少し不調が続いていたのですが、投稿欄に生活する気力をもらいました。幼い頃からずっと、書くことが好きです。これからも頑張ります。貴重な機会をくださり、本当にありがとうございました。

●選考経過報告
 浜江順子(選考委員長)

 今回、新人賞、新人の対象となった方々は、入選回数の多い順から列記すると、むきむきあかちゃん(5回)、佐々木春(5回)、吉岡幸一(4回)、 熊倉ミハイ(4回)、こやけまめ(3回)、よしおかさくら(3回)、柿沼オヘロ(3回)、三刀月ユキ(3回)の各氏であった。選考方法としては、事前に浜江が入選回数の多い方の中から詩人賞1人、新人3人、選外2人を選び、それを叩き台として、3人の選考委員の意見を述べあい、それらを集約、かなりスピーディに決定に至ったものである。これも3人の選考委員が各4期の入選者の選考において、期せずして重なっている部分をかなり有していたからといえよう。
 具体的には新人賞を入選5回のむきむきあかちゃん氏、同じく5回の佐々木春氏、入選4回の熊倉ミハイ氏の3人から誰を選ぶかという議論となり、浜江が3回、雪柳氏が1回、合わせて入選4回の熊倉ミハイ氏を新人賞にすることで、最終的に全員一致で決定した。熊倉氏の作品ついて浜江は「自在な発想をしなやかな言葉にしていく力は安定した域に達している」、雪柳氏は「一篇一篇の完成度が高く、それぞれにおいて表現したいことに迫ろうとする作者の意思を感じることができた」、うるし山氏は「風刺の効いた寓話的な構成のなかに、絶妙なタイミングで鮮度の高い『生きた』言葉を組み込み、技術的にも高いものがあった」と、3人とも高く評価した結果である。むきむきあかちゃん氏も同じく入選5回(うるし山3回、浜江1回、雪柳1回)であり、3人の評価も高く、熊倉氏との間で正直、少し迷ったが、まだ発展途上ということで新人とした。むきむきあかちゃん氏については、うるし山氏は「一年を通して凪のような狂気を感じた。これ以上踏み込むと詩ではなくなる(異化が異化でなくなる)ぎりぎりのラインを、常に冷静に攻めていた」と高く評価。浜江は「18才という若さで韻を踏みながらも自在に自己の感性で飛ばしながら綴る詩は、既に自分のリズムを確立している」、雪柳氏の「己のことばの翼を試すような詩たちであり、これからの伸びしろを強く感じる」とそれぞれ高い評価を与えている。同じく新人に選んだ入選5回(浜江3回、雪柳2回)の佐々木春氏について、浜江は「街を日常を常に見つめる目はあくまで自己の視点を持ち、表現としてその揺らぎまでも詩的に昇華させていく力は秀逸だ」、雪柳氏は「己の視点から立ち上がる詩的世界を捉え確立しようとする姿勢と、その構築を達成しようとする丁寧で繊細な比喩の一つ一つが見事であった」、うるし山氏は「対象を一度指で触り、そのまま離さずに眼に映るものすべてを一定の速度でなぞり続ける。そんな印象を持った」と評している。同じく新人に選ばれた三刀月ユキ氏、入選3回(浜江1回、うるし山1回、雪柳1回)については、浜江は「幻想と現実を根底から見詰めているような詩は迫力がある」、うるし山氏は「喜び・驚き・痛み、そういった人間の原始的な反応を、こねくり回さずストレートに表現した点を評価した」、雪柳氏は「社会的な事象から個人的な経験まで題材が幅広く、それらに対して真っすぐに切り込んでくる眼差しと、率直な表現力が胸を打つ」と、それぞれ評価を与えた。なお、今回惜しくも選に漏れた吉岡幸一氏(入選4回)、柿沼オヘロ氏(入選3回)、こやけまめ氏(入選3回)、よしおかさくら氏(入選3回)についても議論が慎重に重ねられたが、今回は惜しくも新人賞、新人には至らなかったことを報告する。なお、今回は若い世代、特に十代の作品に良い作品が多かったことを付記する。今後にさらなる期待をしたいと思う。
 すべてを選考し終え、目の前の掲げられている大きな時計を見ると、それでも終了時刻の5時10分前であった。新人賞、新人の方に心からの祝福を送りたいと思う。
(新人賞・新人の方の写真は詩祭懇親会の模様)

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