各地のイベントから-2025 埼玉詩祭/関西詩人協会・イベント2025-
各地のイベントから
2025 埼玉詩祭
埼玉詩人会理事長 新井良和
埼玉詩人会主催による「2025埼玉詩祭」は「詩、その不思議な力」を標題として5月11日、さいたま文学館(桶川市)で開催され、会員や他県からの来賓も含め昨年並みの57人が参加した。
第一部では第31回埼玉詩人賞の贈呈式が行われた。選ばれたのは、くりはらすなを氏の詩集『月の領域』で、賞状と絵画作品を元に藍染し額装を施したものを受賞された。
くりはら氏は関係者にお礼を述べた後、今年初めコロナにかかり何も手がつかない時に受賞の知らせを受けたことを明かした。また、詩についてのことではないと断りながらも、小さいときの「かぐや姫」や「鉢かつぎ姫」などが詩の世界に繋がるトンネルのようなものだったかもしれないと述べた。作品3篇を朗読された後、最初の詩集から46年いろいろな人に背中を押されてきたのだろうと感慨深く語った。
第2部は第4回MYポエムコンクール埼玉県知事賞の、県立久喜高校(当時)の宮本奈桜さんとさいたま市立大成中学校の中琉衣さんによる朗読があった。
第3部は中井ひさ子氏による講演会であった。題目は「詩人 水野るり子 ミステリアスな魅力」で、3年前にお亡くなりになっている詩人であるが、埼玉県の旧上福岡市にお住まいだった時にH氏賞を受賞されている。
中井氏は25年前に水野氏と知り合い交流を重ねた。「『ヘンゼルとグレーテルの島』は衝撃で、不思議な世界に連れて行かれた。研ぎ澄まされた感性を感じ、天性の詩人と思った。ファンタジーが詩に大切なものか良く分かった。」などと述べた。
作品については「ヘンゼルとグレーテルの島」「象」「春の・・・」「氾濫する馬」を朗読された。
「『ユニコーンの夜に』の「氾濫する馬」は生命の息吹を感じる。夢の中の出来事なのです。連鎖反応のように言葉から言葉に繋がっている。生命力は再び蘇ることを予期している。地面から湧き出てくるという書き方。ミステリアスな水野さんの詩を感じて頂けたでしょうか。」と締めくくった。

講演する 中井ひさ子氏
関西詩人協会・イベント2025
〈実から虚へ、虚から実へ〉
島 秀生
2025年5月18日(日)大阪市中央区のドーンセンター視聴覚室で、関西詩人協会主催・日本現代詩人会後援による「関西詩人協会イベント2025〈実から虚へ、虚から実へ―─生成AIの時代に詩を書くということとは〉が開催された。第一部の講演は、倉敷在住の詩人・瀬崎祐さんによる同テーマの講演。第二部の〈詩の朗読とのJAZZピアノのコラボ〉は、京都在住のJAZZピアニスト・河野康弘さんによる演奏で行なわれた。
紙面が限られるが、第一部の瀬崎祐さんによるご講演の一部をご紹介する。
従来のAIは、ゲームや画像認証のように与えられたデータに基づいて、分析・予測・判断し、最適解を求めるもの。一方、生成AIは、最適解を目的としていない。与えられたデータから学習して、新たな文章や画像、音楽などのコンテンツ(情報内容)を生成するもので、その正否は不明である。
生成AIが作り出す詩とは、どういうものか。この解明のため、生成AIを搭載したPCを使って、実際に瀬崎さんが詩2篇と短歌3篇をChatGPTに作らせてみたものについて、検証が行なわれた。
詩2篇「歩道橋の涯にて」と「歩道橋の上で」は、歩道橋の上に立つ男にそれぞれ条件を付けて指示した。チャットGPTは、ものの10秒で作品を作ってきた。再度命じると、やはり10秒で書き上げてくる。その詩は、完全とは言えないが詩らしい体裁は整っている。仮に、生成AIが作った単一の詩を、指示した作者がしっかり推敲したうえで賞に応募してきた場合、その選考は予断を許さないのではないだろうか。性善説だけでは済まなくなってくるだろうと危惧されていた。
我々は、外から実を内に取り込み、突き動かされ、言葉という虚に変えて表現している。一方、生成AIは実も虚も持たない。感情も感動もない。持っているのは膨大な蓄積データと学習能力である。しかし、油断はできない。講演を参考に、これからどういう詩を書いていったらいいのか考えるきっかけにしてほしい、と結ばれた。

講演する 瀬崎祐氏