日本現代詩人会とは

この会は日本の詩人の権益を団体的に守り、現代詩の普及発展のために協力し、国際的活動を推進し、詩人相互の親睦をはかることを目的としています。


  • 郷原宏会長

  • 公益信託代表
    以倉紘平

  • 第73回H氏賞
    小野絵里華

  • 第41回現代詩人賞
    河津聖恵

詩投稿結果発表

投稿数509作、投稿者297人。多くの方にご投稿いただきありがとうございました。詩投稿欄第31期(10-12月)の選評および入選作をご紹介いたします。
またトップページに入選作を何回かに分けて、縦書き表示にて順次公開していきます。

詩投稿

H氏賞受賞者や日本現代詩人会の会員たちが入選作を選び選評いたします。

1期一人3篇までの投稿で、3ヶ月毎に選考し、入選作を選評とともに公開します。

第32期~35期選者(2024.1~2024.12)
・うるし山千尋

・浜江順子
・雪柳あうこ

詳しくは投稿規定をご参照ください。皆様のご投稿をお待ちします。

【速報】
◆第74回H氏賞・第42回現代詩人賞決定のお知らせ

 2024年3月2日(土)午後1時から、東京都・早稲田奉仕園セミナーハウスにおいて、第2次選考委員会が開かれました。詩壇の芥川賞とも呼ばれるH氏賞と、中堅以上の詩人に贈られる現代詩人賞が決定いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。なお、授賞式は6月2日(日)私学会館アルカディア市ヶ谷にて開催される「日本の詩祭2024」にて挙行される予定となっております。何卒よろしくお願い申し上げます。

◆2024年度 第74回H氏賞(賞金50万円及び記念品)
●受賞詩集『Uncovered Therapy』(思潮社)
●受賞者(尾久守侑(おぎゅうかみゆ))
●受賞者プロフィール
1989年5月14日 東京都生まれ、東京都在住。
慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。
詩集 2019年『国境とJK』(思潮社)を上梓。その後、『ASAPさみしくないよ』『悪意Q47』(第9回エルスール財団新人賞受賞)。
詩集の他に、学術書として、『偽者論』(金原出版)、『器質か心因か』(中外医学社)他。

<第74回H氏賞選考委員> ◎上手宰(選考委員長)、富沢智、峯澤典子、中本道代、
池田順子、藤田晴央、青木由弥子(理事)

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◆2024年度 第42回現代詩人賞(賞金50万円及び記念品)
●受賞詩集『楽園』(思潮社)
●受賞者(粕谷栄市)
●受賞者プロフィール
1934年11月9日 茨城県古河市生まれ。現在、茨城県古河市在住。89歳。
早大卒。「ロシナンテ」「地球」「鬼」「歴程」同人を経て、現在、「森羅」同人。
詩集『世界の構造』『悪霊』『化体』『転落』『鄙唄』『遠い川』。

<第42回現代詩人賞選考委員> ◎田村雅之(選考委員長)、岡野絵里子、廿楽順治、
                石田瑞穂、小林弘明、鈴木東海子、春木節子(理事)

【速報】H氏賞、現代詩人賞候補詩集決定

 2月3日11時より早稲田奉仕園(東京都新宿区)で開票理事会が、宮田直哉、福田恒昭各投票管理委員の立会いの下に開かれました。その結果、上位8位までの詩集を候補詩集として、16時より行われた各選考委員会に申し送りがなされました。
 また、H氏賞と現代詩人賞の選考委員会では、委員会推薦として各3冊の詩集が選ばれました。結果を以下に記します。

  ■第74回H氏賞候補詩集
佐峰 存『雲の名前』       22票
井嶋りゅう『影』         14票
小川三郎『忘れられるためのメソッド』
               6票
玄原冬子『福音』         6票
水嶋きょうこ『グラス・ランド』  6票
麻生秀顕『パルスと円環』     5票
深町秋乃『柔らかい水面』     5票
根橋麻利『川辺の響き』      4票
野口やよい『星月夜』       4票
山田リオ『ときのおわり』     4票
尾久守侑『Uncovered Therapy』
              委員会推薦
嘉陽安之『朝をつくる』   委員会推薦
藤本哲明『attoiumani_nizi』
              委員会推薦

■第42回現代詩人賞候補詩集
こたきこなみ『ひとがた彷徨』   13票
粕谷栄市『楽園』         11票
水島美津江『更地』        11票
麻生直子『アイアイ・コンテーラ』 10票
硲 杏子『残照・その後』     10票
松岡政則『ぢべたくちべた』    10票
上手 宰『二の舞』        8票
佐々木洋一『でんげん』      8票
白井知子『ヴォルガ残照』     8票
荒川洋治『真珠』      委員会推薦
岩佐なを『たんぽぽ』    委員会推薦
広瀬大志『毒猫』      委員会推薦

 以上です。3月2日㈯に、早稲田奉仕園で行われる第2次選考委員会において、受賞詩集が決定されます。

■第74回H氏賞選考委員
池田順子、上手宰(委員長)、富沢智、中本道代、藤田晴央、峯澤典子、青木由弥子

■第42回現代詩人賞選考委員
石田瑞穂、岡野絵里子、小林弘明、鈴木東海子、田村雅之(委員長)、廿楽順治、春木節子

■投票管理委員
宮田直哉、福田恒昭

■詩集賞担当理事
渡辺めぐみ

(2024・02・06)

【速報】詩集賞選考委員が決定
 
 11月16日の第4回理事会において、第74回H氏賞と、第42回現代詩人賞の選考委員が決定しました。
 両賞とも、2023年2月3日の第1次選考委員会で候補詩集が推挙され、3月2日の第2次選考委員会で授賞詩集を決定します。

■第74回H氏賞選考委員
 池田順子、上手宰、富沢智、中本道代、
 藤田晴央、峯澤典子、青木由弥子

■第42回現代詩人賞選考委員
 石田瑞穂、岡野絵里子、小林弘明、
 鈴木東海子、田村雅之、廿楽順治、
 春木節子

■投票管理委員

 宮田直哉、福田恒昭

■詩集賞担当理事
 渡辺めぐみ

 対象詩集は2023年1月1日から12月31日までに発行されたことが奥付にあるもの。日本現代詩人会会員全員の投票による各上位8詩集と、選考委員会の推薦による各3冊以内の詩集が候補詩集となります。

 (2023・12・20)

 8月26日の2023年度総会において、新理事(任期2年)が承認され、9月21日の第2回理事会で次のとおり、新役員が決定しました。
《会 長》
 郷原  宏
《理事長》
 塚本 敏雄(名簿・HP委員)
《副理事長》
 杉本真維子(詩祭・国際交流)
《理 事》
 山田 隆昭(総務・慶弔)
 秋 亜綺羅(総務・HP・IT)
 野村喜和夫(総務・国際交流)
 根本 正午(一般会計・HP・IT)
 青木由弥子(年会費)
 松尾真由美(詩祭・冊子)
 中島 悦子(子ども・詩祭・冊子)
 渡辺めぐみ(詩集賞・入会)
 浜田  優(会報・名簿・入会)
 広瀬 大志(入会・ゼミナール)
 春木 節子(ゼミナール・入会)
 沢村 俊輔(名簿・記録・入会)
《監 事》
 宮田 直哉
 鹿又 夏実
《HP運営委員》
 光冨 幾耶
《詩集賞・公益信託代表》
 以倉 紘平

日本の詩祭2023・第Ⅰ部・贈呈式・顕彰・詩朗読

「詩投稿 第31期」入選作品紹介Topページに入選作を順次公開します。

青縞蒼「扉」

 先生が此処で待っていろというので僕は立ち続け、ただ、待っていた。
 陰鬱な廊下の突き当たり。ある部屋の前に僕は立たされた。

 かたく閉ざされた重い扉の前にいて、僕は欲しくもない映像を延々とみさせられている気である。ここが最端であるかの様に、その扉は開いてはいけない様子であった。また同時に、開くべきものの様子であった。幼稚な期待と疲労感が無い混ぜになり、先ほどから怯えながら待ち構えていたあの頭痛が一瞬、後頭部付近を通過した。
 仄暗く寂しい空間にステンレス製の扉は黒いままである。無論、一週間が経ようと、この扉は暗い場所に黒いままである。そういった想像がこの扉と僕の間に隔たりを設ける。普段退屈なほど記憶に残るもの、例えば友人の笑い声であったり、散歩中の飼い犬の背後であったり、自動ドアが開く瞬間であったりするああいった退屈な記憶とは違い、この扉は僕から途方もなく遠く、捉え難いのだ。僕は懸命になって(半ば意固地になって)この景色を記憶にとどめようとした。目の前のステンレス製の板をじっと睨んだ。しかし眺めれば眺めるほどそれは僕から遠ざかってしまう。目の前に広がる景色が頭のどこかへ行ってしまう。そうしてまた捉えようとするのだけれど、それはより一層深い奥まりとなって、いつまでも僕から離れて行ってしまうのだ。
 扉はここにあり続ける。この姿を保ったまま、僕がこの場を去った後もここにある。
 なんとなく僕はこの扉を前にして、動き難く、立ち続けた。

 先生の声が聴こえる。それはほとんど扉の、その深い奥まりが僕を呼ぶのだった。

 

吉岡幸一「歓声」

 一本の綱がビルの屋上とビルの屋上の間に渡っている。一人の青年が今まさに綱渡りをしようとしている。青年はビルの下に集まってきた観客を煽るように張り渡された綱をゆらせてみせる。そして拍手を強要するように両手を頭の上にあげて手を叩いている。
 冬の凍てついた風が吹く中で観客はコートの襟を合わせ、寒さに震えながら屋上を見上げている。はやく始まらないかとでも思っているように、足をすり合わせ歯を震わせている。わずか十人程度しかいない観客が一人また一人と去っていく。青年がいつまで経っても綱を渡ろうとしないので、飽きてしまったのだ。
 青年は焦りだす。命を賭けた綱渡りをするのだから、もっと大勢の観客が必要だと思っているのだが、期待に反して増えるどころか減っている。このまま観客が集まるのを待っていれば、逆に減っていく一方だろう。強い風がおさまるのを待ちたかったが、青年はやむを得ず綱を渡る決断をくだす。
 綱は揺れている。風は背中を押してくる。ビルの下に来た警官が、そんな無謀な事は止めてすぐに下りてくるように叫んでいる。警官の声に青年は何故かほっとするが、それを否定するように首を振る。失敗はしない。落ちることはない。落ちれば何が待っているのか、青年は充分に理解している。それでも辞めない理由をうまく説明ができない。もし止めれば観客から軽蔑されることだろうが、街を去る予定の青年にとってはそんな軽蔑などたいして意味を持たない。プライドのためでもない。青年は綱渡りに誇りをもって挑んでいるわけではない。青年は綱渡りをしなければならないからしているだけなのだ。拒絶することは有り得ない。何故しなければならないのか、その問いを愚問ということを青年は知っている。
 綱の向こう側から黒猫が渡ってくる。野良猫だろう。青年の関知しない猫だが観客は青年が綱渡りをする前の前座とでも思っているようで、ビルの下から拍手をしている。黒猫は揺れる綱を恐れることもなく器用に飛び跳ねながら渡ってくる。事も無げに綱を渡り終えた黒猫は、青年に飛び付くと頬に爪を立てて去っていく。青年は怪我をするが、観客の手前笑顔を絶やすことがない。
 黒猫が簡単に綱を渡ったことで青年への期待は下がる。青年は焦る。予定していた命綱を外す決心をする。バランスを取る長い棒なども使わない。意をけっして青年は綱の先に登り、一歩また一歩と進んでいく。風のせいで身体がふらつく。観客は静まり息を飲んで見守っている。警官も声をあげて驚かれることを警戒して黙って見上げている。すべての注目が青年に集まる。この瞬間、青年は世界の中心にいる。一歩踏み外せば、下に落ち、頭を地面に打ちつけて死ぬだろう。死と隣り合わせのこの瞬間、猛烈に生きていることを感じる。青年は湧きあがってくる歓喜に身を熱くし、綱を渡りきることを夢見て前に進む。
 綱を半分ほど渡り終えたとき、歓声が聞こえてくる。実際は青年が落下する悲鳴なのだが、青年にはこの上もない歓声に聞こえる。歓声は青年を包み込み祝福する。成し遂げられなかったものはなにもない。綱を渡りきらなかったとしても、歓声を肌に感じた青年は満足していた。落下しているのに、上昇しているような気がしていた。地面はとてもゆっくりと近づいてくる。口を開け、目を見開き、声をあげる観客の一人一人の顔がはっきりと見えてくる。
 このとき歓声と悲鳴を間違えていた事に青年はようやく気づくが間に合わない。地面に衝突した青年は笑っている。幸せそうな笑みを浮かべて、落ちたことを肯定するように両手を広げている。地面に衝突する瞬間、気づいたことを否定し、誤解していたことを肯定したのだが、それは青年自身の最後の目標の達成でもある。
 綱を渡りきらなかった青年は愚か者と呼ばれるようになり、少ない観客はすぐに散り、警官を怒らせたが、落下した青年がそのことを知ることはない。
 綱はビルとビルの間に残された。いつかまた愚か者が現われて渡ることを期待し、戒め、訓告とするため放置された。ときどき通りすがりの人が綱を見上げるが、自ら渡ろうとはしない。愚か者になる勇気もなく、誰かが渡ってくれるのをただ待っている。

研究活動

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◆会員名一覧 あ―お最終更新日 2022/12/26
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