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研究会の紹介

各地のイベントから(2015.3受)

各地のイベントから(2015.3受)

原体験から世界同時体験へ 「1月17日・神戸」シンポジューム

 阪神・淡路大震災から20年目になる1月17日に神戸文学館でシンポジュームを開きました。会場の入り口に当時の写真を展示し、アルバムをテーブルで閲覧できるように置いたり、当時の新聞をパネルで展示するなど立体的な空間を企画しました。シンポジュームは司会を大橋愛由等氏、たかとう匡子氏の二人のトークを中心に2時間行われました。来場者に会報特別号の「阪神・淡路大震災からの20年を想う」を特集した小詩集を配布しています。
  その日は中野景介館長のお話しによると200箇所を上る記念セレモニーが県下で行われたようで、早朝からその帰りに立ち寄られた方もいらっしゃいました。このようにセレモニーに哀悼の意を捧げて終わるのではなく、大震災の記憶をどう伝えるか、その20年の重みをどう語るかに観客の関心の集まるところでした。そもそも20年の括りだけで考えるのは絵空事でしかないように思えます。なぜならあの時の自然や事物は変化してほとんどがその姿を消してしまっていて、大震災は人々の記憶に残っているだけだからです。歳月の重みのなかで、その原体験の記憶を内在化しつつ言葉は変化をしてきました。今回のシンポジュームでは、言葉にどのような変化とその意味があるのかを会報特別号から拾い出しながらトークが進行しました。
 冊子の表紙にたかとう匡子が書いているように、20年前の3か月後にアート・エイド・神戸の編集で「詩集・阪神淡路大震災 第一集」に「惨禍を越えて153名の詩人が証言する震災の世界」が刊行されています。翌年には第二集「鎮魂と再生を」(129名参加)、さらに翌年に第3集「復興への譜」が発行されました。それらの詩人の迅速なネットワークの中から一方で兵庫県現代詩協会が文化団体として発足したわけですが、今回のアンソロジーの参加者が45名という数字に20年の歳月を考えさせられます。それはさておき、詩篇では、「20年を来し方として」「(死ぬに死ねない)毎日だ」「膿が残っている」という直接的に記憶を語る詩や、アスファルトに残された椀を比喩にして「それはまだ/椀と呼んであげられる/だけの風化」として体験の風化を語る詩や、いわゆる現場ではない周縁の地の体験から「僕は卑怯にも/差延を生きているようだ」との共に苦しむ精神を語る詩や、距離を置いてフイルムを見るように当時の記憶を書いた詩もありました。
 たかとう匡子が「阪神・淡路大震災」は後の3・11の東日本大震災と共通する世界の同時体験として記憶の上に想像力を重ねることが大事だと語られたことが深く印象に残りました。誰の言葉かは失念しましたが、「復興は死者の目から」という言葉に衝撃を受けたことがあります。同じように記憶は死者の記憶であって個人を超えたものだと言えるでしょう。死者の記憶から想像力を働かせて、メタファーとしての文学が「原体験」から「世界の同時体験」として語り継ぐことが一人一人に生きる力になると思います。(文責・髙谷和幸)

 

ポエム・イン静岡2015「詩祭」を開催 「沙羅と言う語の恩寵」以倉絋平氏講演

 1月25日、恒例の静岡県詩人会の「詩祭」をクーポール会館で開催した。まず、代表会員が自作詩の朗読を行った。次に、今年度、先達詩人の顕彰を受けられる新藤凉子さんが、講師紹介をしてくださった。お招きした講師の以倉紘平氏は、三人の朗読作品の感想とアドヴァイスを懇切丁寧にされ、朗読者も聴衆も深く参考になった。
  講演は『沙羅と言う語の恩寵』と題し、熱く語られた。前半は、幻想詩について、子規のリアリズムに触れ、実人生に対する深い関心こそが幻想詩の源である。また、梶井基次郎の「桜の木の下には」の<美しい透視術>を挙げて、問題意識を解決するために詩人の教養の蓄積が無意識のどこかからやってくると。そして、西脇順三郎の異物結合の詩論や連想切断を否定する立場で、「ぼくは夜学の教師を三十年していました。現実はつまらないと言ったら教師はやっていられません」と力説された。幻想詩の上村肇の「みずうみ」と、山本沖子の「小さな町」の終連を朗読された。阿部昭の言葉<あるがままの人生。長い熟視。ひそやかな感動の声。>は、散文の基本であり詩も同じである。
  後半は、「祇園精舎」の冒頭部分を読まれ、母を知らないブッダに思いを寄せ「ブッダ最後の旅」の核心、━さて、そのとき沙羅双樹が、時ならぬのに花が咲き、満開となった。…修行完成者の体にふりかかり、降り注ぎ、散り注いだ。━をまるで読経のように読まれた。何故、生まれて、死んだのが沙羅の樹の下か。沙羅の恩寵が書かれた氏の「この世は沙羅の木陰である」を朗読、沙羅の魅力が語られた。
  講演後の懇親会に質疑応答が持ち越されたが、以倉氏は一つ一つに答えてくださった。沙羅の花のカラー写真と沙羅の樹の葉の実物も見ることができた。参加者は42名と昨年度を上回った。(担当理事・菅沼美代子)

 

石川詩人会総会、新藤凉子氏が講演

  第19回石川詩人会総会及び記念講演会を3月28日開催した。総会では、米村晋会長が「戦後70年を念頭に」と挨拶に立った。事業計画では現代詩コンクール、アンソロジー「いしかわ詩人二十集」刊行、文学散歩、詩の研究会が採択された。
  その後新藤凉子氏による「私の出逢った文人・詩人たち」の記念講演会を実施した。これに先立ち新藤氏の人生の転機になる、満州での記憶を綴った「残留する私」とパリ在住時の「北ホテル」を麻生直子氏が朗読した。闊達に語られた詩人への契機は次の通り。
 満鉄の設計技師だった父が殉職して父の実家宮崎県に帰国した私は、父の学生時代に集めていた文学書に読みふけり、敗戦直後に上京して、新制大学を受けるも失敗して、1年間浪人するうちに草野心平氏の詩集『定本 蛙』に出会い、その中の「冬眠」は円の真ん中にぽつんと一つ、黒い点が置かれていた。雪の中に深く埋もれた蛙の眠りを想像し、私が詩集を出す時は心平さんに序を頂きたいと思った。共立女子大学に入ったものの女子大になじめず東宝舞台株式会社に入社。と同時に劇団東童に入団。その後自立して新宿歌舞伎町に会社を設立。舞台衣装を作る傍ら会員制バー・クラブ・食事処を経営するも、経営は人に任せて渡欧。その後文筆一本の生活に入る。いわゆる文壇人だけの店であったために、印象に残っているのは吉行淳之介、三島由紀夫、吉原幸子などであった。(砂川公子理事)

 

青森県近代文学館開館20年記念名品展

  1/17~3/15 文学館が所蔵する中から青森県ゆかりの56人の作家の133点が展示された。詩人関係では、村次郎の自画像の色紙、菊岡久利の色紙、高木恭造の詩「陽コあだネ村」直筆の原稿など、企画展開催時にしか見られない貴重な資料が披露された。青森県出身ではないが、県立三本木高校校歌を作詞し、奥入瀬に詩碑が建つ佐藤春夫の詩幅も飾られた。
 また、数年前に寄贈された寺山修司が野脇中学時代の文芸部誌「白鳥」創刊号(昭和25年8月20日発行)も訪れる人を魅了した。ガリ版刷りで、寺山は詩、俳句、短歌の作品を書いている。詩は12編。各地の文学館から展示の要望があり、世田谷文学館は2013年に「帰ってきた寺山修司」展を開催。図録で12編の詩すべてを翻刻掲載している。同文学館で閲覧可能。

 

ポエトリー・ライブ 詩歴二百歳の挑戦

 1/31金沢21世紀美術館にて、金沢の女性詩人とジャズ・チェリストで綴る「吉川よしひろと四人の女性詩人たち」を開催。
  活字ではどうしても散文化してしまう詩の世界。詩の韻律を肉声によって伝えようと、「あなたの暮らしは散文的?それとも詩的?」と呼びかけ、朗読の身体性と音楽性を味方に詩神に近づこうという試み。
 プログラムは3部構成。2行詩「春便り」で挨拶。徳沢愛子が金沢方言詩で。砂川公子は「かぐや姫の里帰り」。井崎外枝子は「欠けた神様」。杉原美那子は友情をテーマに。他に劇団アンゲルスが声や舞踏で加勢した。
 吉川氏はニューヨークではサムライと呼ばれた異才の持ち主。宮沢賢治をテーマに「星メグリノ歌」を奏でつつ、「雨ニモマケズ」を東北弁で聴かせ、圧巻だった。最期は、代表作や最新作で吉川氏とコラボ、全員で連詩「球体の水」を披露した。
 約200名の会場は立ち見も出る盛況。4人の女性詩人、溌溂と詩歴200歳の挑戦だった。


(2015年3月新着情報)

◇関西詩人協会新体制 代表・有馬敲 事務局長・大倉元 総務・名古きよえ 会計・河井洋 会報・永井ますみ 議事録・佐古祐二、吉田定一、入退会(名簿)・佐相憲一、嵯峨京子、奥村和子 詩画展・近藤摩耶、外村文象、中尾彰秀 イベント・榊次郎、田村照視、釣部与志、原圭治 国際交流・村田辰夫、薬師川虹一 ホームページ・すみくらまりこ、松村信人(11月16日の第21回総会で決定)
◇12・14 『中日詩人集54』出版記念会(ホテル・サンルート名古屋)
◇2・14 日本詩人クラブ2月例会(東京 東大駒場21KOMCEE・レクチャーホール)講演 久富純江「母、そして詩人高田敏子」
◇2・28 「詩を読んでみよう書いてみよう」(倉敷市立中央図書館)講師・川越文子
◇3・1 各務原詩話会(各務原市産業文化センター)講話・橋本正秀「詩とことばー辺見庸をめぐって」
◇3・8 千葉県詩人クラブ2015年第2回詩の研究会(千葉市中央コミュニティーセンター)講演・斎藤正敏「私と詩の青春」
◇3・13 第45回高見順賞贈呈式・記念パーティ(東京 ホテルメトロポリタンエドモント)受賞・杉本真維子 賞の贈呈・白石かずこ、祝辞・福間健二、司会・北川朱実
◇3・14 日本詩人クラブ3月例会(東京 東大駒場21KOMCEE・レクチャーホール)講演 河井祥一郎「シェイクスピアの魅力と現代」
◇3・15 岐阜県詩人集出版記念会(岐阜ワシントンホテルプラザ)
◇3・30 第10回三好達治賞贈呈式(大阪市中央公会堂) 受賞 高橋順子
◇4・5 第14回あすなろ忌(崔華國忌)(高崎市・コミュニティカフェあすなろ)講演・小見勝栄氏「あすなろ本町時代と高崎の群像」
◇4・11 日本詩人クラブ三賞贈呈式(東京 東大駒場21KOMCEE・レクチャーホール)
◇4・11 第5回詩の虚言朗読会(東京 カフェギャラリーシャイン)「群呆け・明日戦争が始まる」出演・長谷川龍生、宮尾節子、下川敬明、伊集院昭子、高橋紀子、山岡遊
◇4・18 佐相憲一講演会「詩の心、21世紀」(長野 大島博光記念館)
◇4・19 丸屋博<御庄博実>さんを偲ぶ会(広島国際会議場コスモス)
◇4・27~5・3 尾世川正明絵画作品展―ポエジーと顔―(東京 ギャラリー八重洲)
◇4・29 第18回大手拓次を偲ぶ会「薔薇忌」 墓前祭と大手拓次賞授賞式(群馬・磯部温泉会館)
◇5・9 日本詩人クラブ山梨大会2015(山梨・甲府桜座)対談・瀬崎祐&尾世川正明「詩をいかに醸成させるか」 講演・三枝昂之「山河の詩情」

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